1年生部員とマンツーマンで英語議論を交わし、徹底指導を行う部長の清岡君(右)

各校が肯定側と否定側に分かれて討論する英語ディベートの大会で全国優勝の経験を持つ栃木県立宇都宮高校英語部。大学生が挑戦する議題を、大会本番さながらの試合形式で練習しながら、力をつけている。(文・写真 中田宗孝)

移民・夏休み廃止…論戦重ねる

部は、東大の英語ディベート部のウェブサイトを参照するなどして、大学生が大会で取り組んだ議題を普段の練習に活用している。「Japan should significantly relax its immigration policies.(日本は移民政策を大幅に緩和すべきである)」「Summer vacation should be abolished.(夏休みを廃止すべきである)」といった議題だ。

部員たちは、肯定側・否定側に分かれて対戦する。より説得力のある論理を展開した方が勝利。試合後は、その日のディベートの出来について部員同士で話し合う。部活はこの練習試合の繰り返しだ。

肯定側・否定側のチームに分かれての英語ディベート練習試合に白熱する部員たち

深く、広く考える

英語力に日々磨きをかけるイメージがあるが、部長の清岡志悠君(3年)は「いくら英会話が堪能でも語彙(ごい)が豊富でもディベート力は身に付きません」と話す。「大事なのは分析力。与えられた議題から、自分がどこまで深く考え、幅広く発展できるかなんです」

例えば「Idols should be prohibited from having romantic relatiohship.(アイドルは恋愛を禁止すべきである)」。この議題に対して、清岡君は「芸能事務所とアイドルという関係性を発展させ、強い立場にいる者が弱い立場にいる者をどう守るのか、政府が国民をどう守るのかいった、ほかのディベートにも応用できるところまで考えられると、ディベート力が身に付くんです」と語る。

数多くのディベートに取り組んでいると「freedom(自由)」「responsible(責任のある)」「legitimacy(正当性)」など、頻繁に使用する英単語の意味も深く分かってくるという。

3年生の部員の雰囲気を英単語で形容してもらうと「diverse(多様な)」と清岡君。「趣味嗜好(しこう)がみんなばらばら(笑)。でも、試合で勝利を目指す時の団結力はすごい」。そんな彼らは6月で引退。それまでは新入部員の指導をみっちり行うのが部の習わしだ。「僕らの最後の大仕事です」(清岡君)

黒板には「We debate therefore we are .(ディベートのおかげで今の自分たちがある)」と掲げた
部活データ
創部年は不明だが1949年には活動していた記録がある。部員28人(3年生9人、2年生12人、1年生7人)。活動は週6日。年間13の大会に出場。全国高校生英語ディベート大会で2012年優勝、14~16年準優勝。