熱唱するかしわもち君

網膜の病気で生まれつき目が見えない、かしわもちかずと君(本名、北畠一翔君、2年)は兵庫・視覚特別支援学校に通いながら、休日はイベント出演や病院、老人福祉施設などへの訪問などで各地を回り、自作曲やフォークソングを披露している。昨年のライブ活動は30回を数える。

「誰かのために生きてこそ」

幼少期から男性ボーカルのフォークソングや演歌などを聞いて育った。3歳から小学1年生までピアノを習った後、祖母がフリーマーケットでギターを買ってくれたことをきっかけに小学3年生から独学で弾き始めた。ギターを床の上に置いて遊んでいたことから、楽器を膝の上に置いて演奏するスタイルになった。このころ、学校の先輩の漫談家、濱田祐太郎さんからコードを弾いて録音したテープをもらい、テープの音と自分の弾いた音を聞き比べてコードを習得した。

かしわもち君にとっては、ギターの演奏よりも歌の方が難しい。「1番と2番で歌詞が違うと、なかなか覚えられない」。ライブ中、観客が見えないため、MCでは「手拍手や声を出して反応してほしい」と促すなど、工夫している。

「誰かのために生きてこそ、人生には価値がある」というアインシュタインの言葉を引き、「自分の音楽を多くの人に楽しんでほしい」と語る。自分の気持ちを素直に表現する音楽を作り、いずれは「目が見えないことも曲にしていきたい」。 (文・写真 木和田志乃)