「武道」と言われて思いつくのは剣道や柔道だが、「なぎなた」もその一つ。女性の護身術として古来伝わるが、どんな競技なのか。3月の全国選抜大会男子個人の部で優勝したの中村優太(神奈川大付2年)に聞いた。 (文・写真 茂野聡士)

なかむら・ゆうた 2001年11月21日、神奈川県生まれ。神奈川大付中出身。中学校からなぎなたを始めた。

攻撃も防御もできる武具

――剣道とは何が違うの?

一番の違いは、なぎなたの長さです。剣道の竹刀と比べてなぎなたは長く、2メートル10センチ~2メートル25センチほどあります。まずは、この長さをうまく使いこなせるようになる必要があります。また、なぎなたは攻撃するだけでなく、防御もできる武具なんです。

――防御はどうやって?

先端部の刃側で受けることもありますが、手に近い方、つまり柄の部分を使います。相手が自分の体に近い所を狙ってきた場合、素早く動かせるのは柄の方です。柄をうまくコントロールして、相手の攻撃を振り払っていきます。

感動を与えたかも評価

――どんな競技?

「演技」と「試合」という2つの競技があるんです。まずは「演技」ですが、これは空手のように、決められた形や技などを2人一組で演技し、その技の出来栄えを審判の方が優劣をつけます。判定の基準としては、正確に動けているかだけでなく、姿勢や服装、見る人に感動を与えたかなども見られています。

――試合は?

3本勝負で行われて、2本を先取したら勝ちです。有効な打突のポイントは剣道だと面・胴・小手・突きの4つですが、なぎなたの場合は「すね」も有効なポイントと認められます。

――ちなみに当たり所が悪かったら……。

何も着けていない部分は、ものすごく痛いですよ(笑)。なので試合競技のときは、各部分を守る防具を着けているんです。

すねを守る防具

 

――実際に見てみると、野球でキャッチャーがつけるプロテクターみたいです。

そうなんです。全体をカバーしている分、最初は動きづらくて慣れるのが大変でした。それを身につけたうえでの足さばきも、日々の練習で慣れていきます。

――なぎなた部に入ったきっかけは?

もともと僕は小学校の頃から剣道をやっていました。なので中学校に入学して武道をやりたいな、と思って剣道部の見学に行ってみると、その隣でなぎなた部が練習していたんです。それを見て興味を持って体験入部したら、先輩方が優しくしっかりと教えてくれたので、なぎなた部に入部しようと思ったんです。

女子に向いている

――面白いなと感じた点は?

面白さと同時に難しさを感じたところは、「力いっぱい振る」とうまくいかなくなる点です。最初になぎなたの長さについて話しましたが、この武器は長さを利用した遠心力で攻撃します。実際になぎなたを扱ってみると分かるんですが、少しでも力んでしまうと、遠心力がうまく使えず、素早い立ち回りができなくなります。

――力がなくても扱える、ということ?

そうです。むしろ男子よりも筋力がない女子の方が、うまく扱うことができるんです。実際、僕も(中学での)入部から中3の途中までは、女子の先輩に全く歯が立たなかったくらいですからね。

――最初は負けが混んでも、先輩と戦うことで技術を身につけていったんですね。

僕らのなぎなた部は先輩が後輩に技術を教えていく、という伝統があります。僕は『中段の構え』からの動作が得意なのですが、先輩から教えてもらったものを磨き上げて、今は後輩たちに教えていきたいなと思っています。

――3月の選抜大会を優勝していますが、今後の目標は何ですか?

なぎなたという競技を1人でも多くの人に普及していきたいです。自分の技を磨きながら、将来的には指導者として楽しさをぜひ伝えていきたいと思います。