地震大国と呼ばれる日本。首都直下型地震など、大地震が起こることが心配されている。いざというときに焦らないためにも、知っておくべきことは何だろう。災害時に本当に役に立つ技や知恵を発信しているNPO法人プラス・アーツの坂本良子さんに災害時に役立つグッズについて聞いた。 (文・野口涼、写真・野村麻里子)
私たちは、これまで阪神・淡路大震災の被災者に「被災したとき、どんなことに困りましたか」「それをどう乗り越えましたか」という2つの質問をしてきました。その結果分かったのは、被災者は困ったことのほとんどを、何かしらの方法で乗り越えたということ。その方法こそ、被災したとき本当に役に立つ情報といえます。今日はその一部をご紹介しましょう。
懐中電灯はNG 両手が空くヘッドライトが使える
防災グッズと聞いて、真っ先に思い浮かぶ物のひとつに懐中電灯があるのではないでしょうか。しかし、残念なことに懐中電灯はあまり役に立ちません。理由は懐中電灯を持つと片手が塞がってしまうから。けがの手当をするとき、料理をするとき、被災直後は何をするにも両手が必要です。ですから被災地で本当に必要なのは頭に装着できる「ヘッドライト」なのです。
食器は紙で作れる 折り方を覚えておこう
一枚の紙から折り紙の要領で作る紙食器。ラップやビニール袋をかぶせれば汁物を入れることもできます。大きさ、固さなどの点ではA4のチラシで作ると使い勝手がよいようですが、新聞紙などの柔らかい紙しかない場合は2つ作って重ねると安定します。作れば作るほど早く上手に作れるようになるので普段から作り慣れておくのがおすすめ。まずはお花見などのイベントでお菓子などを入れる器として使ってみてはどうでしょうか。
食器にはラップやビニール袋をかぶせて使えば、それを取り、新しくかぶせるだけで清潔に繰り返し使うことができます。ラップは新聞紙とあわせれば防寒にも使えるので覚えておきましょう。新聞紙は防寒、骨折したときの添え木、簡易トイレに…と万能に使えます。古紙回収の際も1週間分は残しておくと安心です。
詳しい折り方はプラス・アーツが運営するウェブサイトでチェック
大判ハンカチを持ち歩こう
普段持ち歩くハンカチを50センチ四方くらいの大判に変えてみましょう。壊れた建物などのホコリを吸い込まないよう頭の後ろで結んでマスク代わりに、止血の際の当て布に、中に石などの固いものを包んでハンマー代わりにと、災害時に何通りもの使い方ができます。
ビニール袋とリュックで水が運べる
過去の震災では「給水車が来た時、容器がなくて水がもらえなかった」というケースもありました。ポリタンクなどがなくても、台車に乗せたダンボールに大きいビニール袋を二重にかぶせれば、水を入れて運ぶことができます。運ぶ時はビニール袋の上を縛るのを忘れずに。また、マンションなどの上階に水を運ぶときは、ビニール袋にかぶせたリュックに水を入れてもらうとよいです。
ビニール袋は100均などで「S・M・L」と各種サイズを揃えておきましょう。ちょっとした食品を入れる時に便利なのはもちろん、少し大きいものを使えば中で簡単な調理をすることも。また、けが人の応急手当のときに手にかぶせれば血液に触れないですみます。
ビニールと新聞紙で簡易トイレを作れる
災害時にトイレが使えないのは、どこで下水管が壊れているか分からないから。マンションの1階部分で壊れていたら、上の階で流した汚水が1階であふれ出してしまうことになります。阪神・淡路大震災の時は、下水道管の復旧に90日以上かかりました。ビニール袋と新聞紙を使った簡易トイレの作り方はぜひ覚えておきましょう。なお、汚物の入ったゴミ袋は、行政によるゴミの回収が再開されるまで、自宅に保管しておくしかありません。ビニール袋を結ぶ前にファブリーズなどの消臭剤をかける、園芸用品用のコンテナなど密閉できる入れ物に消臭剤と一緒に入れておくなどの工夫をすれば臭いを多少なりとも抑えることができます。
詳しい作り方はプラス・アーツが運営するウェブサイトでチェック
新聞紙とラップで防寒ができる
新聞紙とラップがあれば、防寒対策することができます。ポイントは新聞紙をくしゃくしゃにすること。その新聞紙を服と服の間に入れて、外側からラップで巻くと、空気の層ができて暖が取れます。
【NPO法人プラス・アーツ】阪神・淡路大震災から11年後の2006年、防災への関心が薄れつつあった神戸で設立。震災時に実際に役立ったもの・ことを伝えるために全国で活動している。