五輪での競技継続が決まったレスリング。8月の全国高校総体(インターハイ)では、今年から女子レスリングが公開競技になり、安部学院(東京)が全階級で上位に入った。2020 年東京五輪も決まり、選手たちは7年後の夢舞台に向けて練習に励んでいる。(文・写真 斉藤健仁)

9月、東京五輪の開催と除外候補の一つとなっていたレスリングの競技存続が決定した。 「東京で開催されるので、何とか出場したい!」
目を輝かせるのは安部学院レスリング部のメンバーたち。インターハイでは19人の部員中11人が、3位以内に入った。

練習には部員だけでなく、付属校の中学生、OGの大学生、社会人も集い、毎日およそ30人が練習に精を出す。成富利弘監督(49)は「(大学生などの強い相手と毎日戦っているので)高校でトップになっても、てんぐにならない。強くなりたいならより強い選手と戦え」と自主性に任せる。無名選手からトップへと成長した選手もいる。
練習はほぼ毎日。毎朝7時から45分間のランニングで汗を流す。放課後は30分の筋力トレーニングで始まり、17時からの約2時間はマット上で組み合う。

レスリングは個人競技だが、部活動としてチームワークを重視する。毎月1回は全部員で大会などの運営を手伝い、手にした謝礼金を元に3日ほどの合宿を敢行。合宿では練習だけでなく、洗濯、自炊などにもみんなで取り組む。主将の香山芳美(3年)=神奈川・久木中出身=は「つらい練習もありますが、みんなでやるので乗り切れる」と話す。

3月、部を悲しみが襲った。沖縄での修学旅行中、交通事故で部員の堀幸奈さん(当時2年生)がこの世を去った。「本当に大変でしたが、今では彼女のためにと、みんなで頑張っています」(成富監督)。

堀さんのためにも――。その思いが、インターハイの好結果にもつながった。
部には3人のJOC(日本オリンピック委員会)エリートアカデミーの選手がいる。同アカデミーは、女子レスリング、卓球、フェンシングの有望な選手を中学時代から集め、東京の味の素ナショナルトレーニングセンターで育成するプロジェクト。3人は、木曜日以外は部員として学校で練習する。インターハイの46㌔級で優勝した田辺優貴(3年)=千葉・常盤平中出身=は「アカデミーの選手がいることは刺激になっていますね」と話す。