「AIU米国高校生国際交流プログラム*」とは、日本全国から選抜された20人の高校生がアメリカ全土より選抜されたアメリカ人高校生20人と京都で2週間共同生活を送るものです。日米相互の文化交流や、他者理解と自己理解を深めることを目指します。奨学金があるので無償で参加できます。私は昨年夏に参加しました。どんな体験をしたのかお伝えします。(佐伯美月・早稲田実業学校高等部3年)

「真髄を掴め」をスローガンに、日米の高校生が「高校生外交官」としてそれぞれの国を代表し、自国を伝え相手国を学ぶ中で物事を追究する。この言葉に心を動かされ、応募を決意しました。

クリスマスも正月も…日本人の宗教観で議論

 

特技や夢などの身近な話題から難民問題や戦争と平和などの世界規模の問題まで、たくさんのことを語り尽くしました。参加者それぞれに多彩なバックグラウンドがあり、自分とは異なる価値観を持っていました。

特に印象に残っているのは、金閣寺や西本願寺、下鴨神社などを巡り、その特徴や歴史的背景を伝えていた時のこと。アメリカ人参加者が日本人の宗教観について疑問をもち、「仏教や神道を重んじているのに、他の宗教の行事も取り入れているのはなぜ?」と問いかけたのをきっかけに議論へと発展しました。

家族や友人とクリスマスを楽しみ、その数日後には神社やお寺に行き新年を祝う。私にとっては当たり前の習慣でも、彼らにとっては不思議でならないものだったのです。神道の多神教的な教えが根付き、幅広い考えを受け入れる傾向にある日本では、他の宗教にも敬意を払い、行事にも参加している。それは今や文化の一つになっていると説明しました。

慣れない文化に初めは驚いていた彼らも、次第に日本人特有の感性を理解し、日本における宗教にさらなる興味が湧いたようでした。文化が形成された過程や当時の人々の思いまで追究することで、文化や習慣の違いを「個性」として尊重する輪が広がりました。

相手に伝えるには自分自身、日本を知ることが大事

熱い議論を交わす中で気づいたのは、「知ること」の大切さです。何かを伝えるには、自分自身や自国についての深い理解が必要です。例えば、食事中の箸のマナーを伝えようとしたとき。「差し箸」や「寄せ箸」などの行為そのものを説明しただけでは、私たちが大切にしている考えは伝わりません。その理由、さらには背景にある「同席者と楽しく食事をしたい」という思いまで伝えて初めて、日本文化を伝えたことになります。
そして相手を知ることは、相互理解への第一歩となります。この繰り返しは、知識や視野を広げ、社会や世界を深く追究する契機になります。知ることは、大きな世界へ飛び込む第一のステップではないでしょうか。

「一歩踏み出す」参加者からの一言が支えに

自分の意見を英語で発信するのは、とても勇気がいることでした。伝えたいことの半分も言葉にできなかったこともあります。積極的に議論に参加することが怖くて、挑戦することをためらっていた私の背中を押し続けてくれたのは、アメリカ人のルームメイトをはじめとする日米の参加者でした。「一歩踏み出してみなきゃわからないよ。」その時かけてくれたこの言葉を支えに、どんな困難にも正面から向き合いました。

ディスカッションでは、言葉に詰まることがあっても、関連する単語やジェスチャーで補い、自分の意見を伝えることに努めました。ルームメイトとけんかになってしまったときは、「互いの考えは違うけれど、それも含めて認め合いたい」と涙ながらに伝えました。意見の対立はありましたが、「真の友情を築きたい。」という思いは双方で同じだとわかり、互いへの感謝の言葉と共に思いっきりハグをしました。

本気で挑めば、結果に関わらず多くの学びを得られることに気づきました。その姿勢を忘れずに、今の自分にできないことに挑戦し続け、私なりの道を切り開いていくつもりです。

*2018年1月から「AIG高校生外交官日本プログラム」に名称変更
 

【AIG高校生外交官 日本プログラム 参加者募集】
期間:2018年7月26日~8月7日
参加者:高校2~3年生(2018年7月時点)
募集人数:男女各10人、計20人
応募方法:参加申込書を学校が取りまとめ、封筒には「応募書類 ○部在中」と送付する部数を明記の上、AIG高校生外交官プログラム事務局宛てに郵送
選考方法:1次選考・参加申込書をもとに書類選考。結果は2018年3月初旬に学校あてに郵送にて通知。2次選考・3月に面接など
応募締め切り:1月31日(水)必着
詳細:http://www.highschooldiplomats.org/contents/bos-jphsd.html