原発再稼働に痛手

広島高等裁判所は四国電力・伊方原発3号機(愛媛県伊方町)の運転差し止めを求めて住民らが申し立てた仮処分の即時抗告審で、運転を差し止める決定をした。決定は直ちに効力を持ち、対象期間は9月30日までで、四国電が1月に稼働を再開する計画は事実上不可能となった。政府や電力会社の原発再稼働方針には大きな打撃となる。
 東京電力福島第1原発の事故後、原発の再稼働や運転を禁じる高裁段階の司法判断は初めて。自治体の避難計画や再稼働の同意への影響は避けられない。

「住民の生命に危険」

野々上友之裁判長は、熊本県・阿蘇カルデラで大規模噴火が起きた際に原発が約130㌔の距離にある点を重視し「火砕流が到達する可能性が小さいとはいえず、立地には適さない」と指摘。火山の噴火による危険について、原発の新規制基準に適合するとした原子力
規制委員会の判断は不合理であり、「住民の生命、身体に具体的な危険の恐れがある」とした。

決定はさらに、原発から約100㌔離れた広島市の住民にも広域被害の恐れを認定。関西電力・高浜原発3、4号機(福井県高浜町)に関して2016年3月に大津地裁が半径70㌔圏に当たる滋賀県の住民の申し立てを認めた決定よりも範囲を拡大した。

 

火山と原発の議論に一石

今回の決定は、原発の火山対策の不備を浮き彫りにした。同時に、政権が「世界一厳しい」とする原発規制基準に適合しているとした、規制委の判断に疑問符を投げ掛け、活火山の桜島を抱える九州電力・川内(せんだい)原発(鹿児島県薩摩川内市)など、火山と原発立地をめぐる議論に一石を投じたことになる。
 伊方原発3号機は16年8月に再稼働し、17年10月から定期検査中だった。広島高裁の決定を受け、四国電は高裁に異議と決定の効力を一時的に止める執行停止を申し立てた。