部長の諏訪君。金賞を獲得し、ダルマに両目にが入った

埼玉県立浦和高校のグリークラブは2017年10月の全日本合唱コンクール全国大会で初の金賞と文部科学大臣賞を受賞した。第42代部長を務めた諏訪智也君(3年)にインタビュー。ラテン語で複雑な難曲をどう練習してきたのか、部活をどう引っ張ってきたのか。たっぷり話してもらった。(文・小野哲史、写真・幡原裕治)

悲願の金賞「目が点になるくらい驚き」

――10月の全日本合唱コンクール全国大会で初の金賞と文部科学大臣賞を受賞しました。その感想から聞かせてください。

僕は理念として、これ以上、上には行けない「最高」という言葉はなるべく使わないようにしています。それでも「最高」と言いたくなるくらい素晴らしい舞台になりました。演奏が終わった直後から、「今日はやり切った」という達成感があったからです。課題曲も自由曲も「かなり難しい」といろいろな人から言われる中で、とにかくみんなが諦めなかった。1人1人が頑張り、全体としても頑張って、パズルのようにガッチリはまった印象です。

表彰式では顧問の小野瀨照夫先生と一緒に舞台に上がり、金賞と発表されたときは、お互いに顔を見合わせて、目が点になるくらい驚きました。そこで僕たちは満足し、完全にリラックスしていたので、その後の文部科学大臣賞で番号を呼ばれたとき、すぐには気づかなかったほどです。舞台上で「先生、ウチが文部科学大臣賞です!」「えっ!」と、おかしなやり取りを繰り広げてしまいました。それでも次第に喜びが大きくなっていきました。

「僕らの代でだるまに目を入れたい」

――大会前は具体的にどんな目標を立てていたのでしょうか?

金賞です。浦和高校グリークラブが獲得したことのない唯一の賞が、全国大会の金賞だったからです。今まで2度出場した全国大会は銀賞と銅賞だったので、あとはその上の金賞しかないなと。そのためには小さい目標、中ぐらいの目標などを設定し、ステップアップしていけるような細かい計画を立てました。

また、だるまもモチベーションになりました。9年前に全国大会に初出場し銀賞を受賞した先輩が「金賞を獲ったらもう1つの目を入れよう」と、片目のだるまが代々受け継がれていました。僕たちが1年生だった2年前は銅賞で果たせませんでしたから、「僕らの代が目を入れるしかない」という思いがありました。

さらに、顧問の小野瀨照夫先生が今年度限りで定年を迎えられます。先生には、金賞受賞校の顧問にしか贈られないメダルを首にかけてほしかった。だから絶対に金賞を獲りたかったのです。

不協和音、リズム複雑、パートは最大20…難曲に挑んだ

――曲にはどんな難しさがあったのでしょうか?

自由曲に選んだ曲は不協和音で始まり、リズムが複雑で、最大20パートに分かれる部分もあります。しかも歌詞はラテン語でした。制限時間が6分30秒ですが、普通に歌うと7分半はかかる曲なので、最初の頃は終わりまで歌い切ることさえうまく行きませんでした。速く歌うためには、まずは丁寧にきっちりできないといけませんが、そこに至るまでが大変でした。