これから本格化する大学受験シーズンは、風邪やインフルエンザが流行する季節でもある。「大切な試験を受けられなくなった……」なんて事態にならないよう、牧野記念病院(横浜市)の内科医・建部雄氏さんに、今からできる適切な予防法を教えてもらった。

建部雄氏さん  たてべ・たけし 京都市生まれ。2001年、昭和大学医学部卒業。大規模総合病院の救急科で経験を積み、急性期病院・クリニックの勤務を経て現職。

──予防のために必要なことは?

バランスの取れた食生活や適度な運動、睡眠時間の確保、外出時などのマスク着用、外出先から帰宅した際の手洗いといった生活習慣の徹底が基本です。意外と実践できていない受験生がいて、大事な時期に風邪やインフルエンザにかかってしまいがちです。

歯磨きとマウスケアを

──やった方が良いことは?

歯磨きを念入りに行うのに加えて、マウスケア(図参照)を行い、歯茎と口腔粘膜の境目にある歯垢や食べかすを除去しましょう。ウイルスが口や鼻から体内に入ることで風邪などに感染しますが、もともと鼻や喉の粘膜等はウイルスが付着しにくい仕組みです。ところが、口腔内の食べかすなどの歯垢がこの仕組みを妨げてしまうからです。

また、ドラッグストアなどで購入できる鼻うがい薬を正しく使えば、鼻の内部に侵入したウイルスを早めに洗い流せます。ただ、やり過ぎは逆効果になることもあるので注意しましょう。

 

乳酸菌食品を多めに

──予防に役立つ食べ物は?

乳酸菌食品です。ヨーグルトなどの乳酸菌食品を毎日食べる習慣をつけましょう。苦手なら乳酸菌が多く含まれる、ぬか漬けやキムチなどを食べましょう。乳酸菌(善玉菌)を摂取すると腸内の免疫担当細胞が活性化し、インフルエンザなどのウイルスを撃退するのに効果を発揮し得るといわれています。

予防接種 効果は2週間後

──インフルエンザの予防接種は受けるべきですか?

予防接種は医学的根拠の確かな予防法です。国立感染症研究所の過去10年間のデータをみると、おおむね流行期は12~3月、ピークは1~2月。この期間にワクチンの効果が発揮できていればいいわけです。厚生労働省によると、ワクチンの予防効果は接種した2週間後から5カ月程度、13歳以上は1回接種でも効果があるとしています。ワクチンの効果を得るために、適切な時期に接種しましょう。

適度な湿度と室温に

―─部屋にいるときに気を付けるポイントは?

風邪やインフルエンザの原因ウイルスは、低温乾燥の条件を好みます。空気が乾燥すると、気道粘膜の防御機能も低下してしまいます。加湿器などを使って適切な湿度(50~60%)を保つことが効果的です。室温は20~25度を保ち、日中1~2時間おきに換気するのが理想的とされています。寝るときも暖房や加湿器をつけておくことを勧めます。

──人混みに出なければならないときに心掛けることは?

「暑すぎず寒すぎず」の服装の上で、使い捨ての不織布マスクを正しく着けましょう(図参照)。帰宅時は必ずせっけんで手洗いをして、うがいは水かぬるま湯でしましょう。使ったマスク本体は触らないようにして毎日交換し、もし触ってしまったら手をしっかり洗いましょう。

ウイルスを寄せ付けないために

歯磨き+マウスケア

 

◆通常の歯磨きに加えて、毎日1日1回、歯茎、舌、頬や唇の裏側の口腔粘膜を軽く弱い圧で1、2回だけブラッシング。

◆最後に口をすすぐ際、殺菌効果のあるマウスケア用またはうがい用薬液を用法通りに薄めたもの、もしくは冷めた緑茶や紅茶などを使う。すすぐだけでうがいはしない。

 

 

正しくマスクを着用

 

◆口だけでなく鼻も顎も、可能な限り隙間無く覆うことが基本。耳に引っ掛けるゴムひもが緩んでいないかチェックしよう。口腔周囲の温度・湿度が維持されて、気道粘膜の免疫を維持できる。

 

 

インフルエンザの予防接種を受ける

◆効果は接種してから2週間程度かかる。適切なタイミングで接種する。

部屋を予防に適した環境に

◆湿度は50~60%を保ち、室温は20~25度。日中は1~2時間に1回換気。