10月22日に投開票が行われた第48回衆議院議員総選挙(定数465議席)は、自民党が選挙の公示前と同じ284議席を獲得して大勝した。与党の公明党と合わせて憲法改正の発議に必要な定数の「3分の2」超を確保。安倍晋三首相は憲法改正について「与野党にかかわらず、幅広い合意形成に努める」と意欲を語った。

 

投票率53.68%

公示直前に結成された立憲民主党は公示前の15議席から55議席と3倍以上の議席を確保し、野党第1党に躍進した。一方、9月下旬に小池百合子・東京都知事が立ち上げた野党・希望の党は公示前の57議席から50議席に後退。野党の共産党、日本維新の会、与党の公明党も減らした。

 

投票率は53.68%で、戦後最低だった2014年の前回総選挙を1ポイント程度上回っただけだった。18歳の投票率は50.74%、19歳は32.34%(いずれも一部の投票区を集計した速報値)だった。

野党分裂で自滅

衆院選直前に民進党の前原誠司代表が希望の党への合流を表明したのをきっかけに、民進の立候補予定者は立憲民主党、希望の党、無所属に三分された。このため、「自民、公明両党」の与党勢力に「希望の党、日本維新の会」「立憲民主、共産、社民3党」の野党2勢力が挑む構図となった。

その結果、各選挙区から1人が当選する「小選挙区」(289議席)で、各勢力が候補者を1人以上出した208選挙区の8割超で与党が勝利。野党は政権批判票が分散したせいで苦戦を強いられた。

政党名で選ぶ「比例代表」(176議席)の獲得票数では、立憲民主(19%)と希望(17%)を合わせると自民(33%)を上回った。

幼児教育費は軽減へ

選挙戦で各党は子育て・教育費の負担軽減を訴えており、この流れは変わらないだろう。安倍首相は19年度予算で5歳児からの無償化を前倒しして実施し、残る3、4歳児と低所得世帯の0~2歳児については20年度から実施する方針だ。

財源は19年10月に10%に引き上げられる予定の消費税増税で賄われるが、国家財政の悪化を招き、結果的に無償化の恩恵を受けた子どもたちが国の借金を負担することになりかねない。政府内にも、必要財源を抑制するため所得制限を検討すべきとの声がある。

憲法改正に現実味

公約に憲法改正を明記した自民党が大勝したことで「改憲」が現実味を帯びてきたが、自民党が掲げる改正内容に反対する立憲民主党が野党第1党になり、改憲発議はまだ容易ではない。ただ、立憲民主党も改憲には反対しておらず、今回の選挙をきっかけに論議が「改憲の是非」から「どのような改憲ならすべきか」という一歩進んだものになるだろう。

北朝鮮情勢、選挙に影響

北朝鮮への断固たる態度を打ち出し、国民の怒りや不満に訴えたことが自民党圧勝の理由の一つだ。だが、米国と一緒になって圧力を強める、というこれまでの対北朝鮮外交は成果を挙げていない。核放棄を前提に、北朝鮮が交渉の場に出てくる外交が必要だ。