WANIMAやflumpoolの楽曲に合わせ、力強くもしなやかな筆さばきで巨大紙に言葉を書き記した

強豪として知られる埼玉・県立川口高校書道部。高校最高峰の書道大会「国際高校生選抜書展(書の甲子園)」をはじめ、多くの書道展で入賞してきた。個人での作品制作のみならず、書道パフォーマンスにも精力的に取り組んでいる。仲間と共に地道な練習を乗り越える部員の姿を追った。(文・中田宗孝、写真・田部翔太)

音楽に乗せて書を披露

「書道を通し繋(つな)がる熱い思いを筆にのせあなたの胸に届け」「私たちお蔭様(かげさま)でここまで来た」。学校の中庭に巨大な紙を広げ、親への感謝を込めたメッセージやJポップの歌詞などを赤や黄色のカラフルな墨汁で書いていく。

9月9日に行われた文化祭で、書道パフォーマンスを全員で披露した。1、2年生は軽快な音楽に乗せて書の楽しさを文字に表した。3年生は部活に打ち込んだ自分たちの青春の日々の思いを一筆一筆、丁寧にしたためた。「書き上げました!」の声に観客が拍手で応える。墨汁まみれの部員たちは笑顔であふれていた。

文化祭で書道パフォーマンスを披露する部員

 

部長の一言で全員集中

普段の練習は部長の本庄未於さん(3年)を要に、部員たちが中心となって進める。「作品(制作)の時間です。集中して書いてください」。部長の一声で「全員集中」の時間が始まる。書道室がしんと静まり返り、緊張感に包まれた独特の空気が流れていく。

部員たちは基本練習の臨書(有名書家の作品を手本にした書道の学習法)に没頭する。自分の作品書きに集中しながらも、「決して自分一人で書いているんじゃない、部員みんなで書に向き合っているんだ、という共通意識を持っています」(本庄さん)。その心構えが、大人数での書道パフォーマンスに必要な、部の結束を生むという。

本庄さん(右)は部を山本さんに託す

 

批評会で見る力養う

一日の練習で自分が何枚書いたのか分からなくなるほど、半紙に黙々と書き込む。「上達のためには書き続けるしかない」(本庄さん)

部員の作品を見比べる「批評会」では、顧問の先生だけでなく部員同士でも作品の良しあしを語り合う。これは、部員たちの「書を見る力」を養い、単に書くだけでなく自分の作品を創るという「作品観」を身に付けさせる意図がある。

紫の袴をまとうのが3年生。最後の文化祭を終えて感極まる

 

3年生が添削指導

3年生が後輩部員の作品を添削指導するのが部の特色。個々の実力を伸ばす顧問の先生の直接指導を積極的に受けに行くよう、後輩部員へ声を掛けるのも3年生の役割だ。

10月で部を支えた3年生が引退。新部長には、1年生のころから学年代表を務めてきた山本衣未花さん(2年)が指名された。「先輩が築いてきた作品重視の方針は変えずに、書道パフォーマンスの向上を両立させていきたい」(山本さん)
 

【県立川口高校書道部】
2001年創部。部員28人(3年生15人、2年生3人、1年生10人)。活動は週5日。年8回程度、書道展に作品を出品し、校内外で年7回、書道パフォーマンスを上演。2016年度の第25回国際高校生選抜書展(書の甲子園)では、部員15人が秀作と入選に輝き、北関東地区(埼玉、茨城、栃木、群馬)団体優勝。