柳生健成君(幡原裕治撮影)

2017年7月6日から15日までタイのナコンパトムで行われた第49回国際化学オリンピック(IChO)に日本代表の一人として参加した柳生健成君(やぎう・けんせい=愛知県立岡崎高校3年)に大会までの準備や、本番の様子、化学の魅力などを聞いた。

中学時代から高校化学を趣味に

――いつごろから化学に興味を持ったのですか?

中学時代、姉の高校化学の教科書を見つけて読んだらすごく面白かったのがきっかけです。ある物質とある物質から全く新しい物質ができることや、より効率よく物質を作るための理論など、今まで知らなかっただけにすごく魅力的でした。中学校の理科ではまだ化学としては扱わないので、趣味のひとつとして高校化学の教科書を読んでいました。

――高校では?

高校で本格的に化学を学びたいと思い、SSH(スーパーサイエンスハイスクール)指定の県立岡崎高校を進学先に選びました。中学では水泳部でしたが、高校では化学部に所属し毎日活動してきました。化学オリンピックに関しても、オリンピックそのものを目指していたというよりも、化学が好きで勉強を続けてきたら代表に選ばれちゃった、という感じです。

――国際化学オリンピックの代表候補を選ぶ国内大会の「化学グランプリ」に高校1年から参加してきましたね。

高1では銅、高2では銀を取りました。化学グランプリの課題に取り組むことで考える力を養うことができたと思っています。高2で銀賞を取った時、国際化学オリンピックの代表候補に選ばれることになって、大学で使うような化学の教科書がどっと送られてきました。自分自身ではそろえようがないようなものばかりだったので、とてもうれしかったです。一つの分野を突き詰めて勉強させてもらえる機会をもらえて感謝しています。

初の海外旅行が化学オリンピック

――初めての国際化学オリンピックはどうでしたか?

僕にとって初めての海外旅行でもあったので、楽しかったです。開催地だったタイは、都会は東京よりも都会で田舎は日本の田舎よりもずっと田舎という感じがして、都会と地方の格差が大きいと思いました。新興国らしく、エネルギーを感じました。

――海外の選手との交流は?

ベトナムやジョージアの選手と仲良くなりました。化学の話も少ししましたけど、みんなでトランプをしたのが楽しかった。同じトランプでも、国によって違うゲームをするんです。お互いがルール説明をするのですが、その時にも英語力がものを言うので、そこも面白かったです。英語は得意なんですが、他国の選手とコミュニケーションをとるには、英語力よりも積極性が一番大事だな、と思いました。日本のお土産も持って行ったのですが、扇子がとても喜ばれました。

平日は学校の勉強、土日にオリンピック準備

――普段はどんな生活を送っていますか?

朝は5時起床。可能であれば、朝から学校の予習などをします。7時に家を出て学校に向かい、帰宅するのは午後7時ごろ。今までは10時半には寝てしまっていたけど、そろそろ受験が近づいてきたのでそうも言っていられなくなってきました。12時くらいまでは勉強するようになったかな。

――化学オリンピックと学校の勉強の両立は大変でしたか?

正直、大変でした。平日は学校の予習復習で手いっぱいで、化学オリンピックの勉強は土日にやるといった感じです。これは、僕が公立高校に通っているということも大きかったと思います。オリンピックで知り合った私立に通っている仲間は、わりと学校の勉強が進んでいたようなので。

――学校の勉強なんて面倒だ、と思ったことはありますか?

それでもやはり、学校の勉強も大切にしたいと思っています。特に現代文なんて、僕の場合、国語の授業がなければなかなか勉強しないと思うので。

――現代文が大切と思うのは?

僕は将来、医学研究の道に進みたいと思っています。医学って人を相手にすることだから、心を推し量ったりするためにも現代文などを読むことも大切にしたいと思っています。

――医学にどのようにアプローチしたいと考えていますか?

化学からなら薬というアプローチも考えられますし、僕は生物にも興味があって、実はこのあと日本生物学オリンピックにも参加する予定でいます。そもそも僕の理科への関心は、小さいころの昆虫採集から始まったみたいなものなので。将来は、医学の研究者として、生物、化学両面からアプローチできるようになりたいと思っています。

(聞き手・構成 山口佳子)