英国とフランスは、2040年までにディーゼル車とガソリン車の販売を禁じる方針を発表した。世界最大の自動車市場である中国も同様の方向で検討に入ったとされる。これらの動きを反映し、9月にドイツで開かれた世界最大級の国際自動車ショーでは電気自動車(EV)が主役となり、普及への取り組みが世界規模で本格化していることを示した。
国内外メーカーの開発競争が激化
世界の有力メーカーは、次々に電動化にしのぎを削る。英自動車大手ジャガー・ランドローバーは20年以降に販売する全車種の電動化を発表。ドイツ自動車大手フォルクスワーゲンも30年までにグループの全約300車種に電動化モデルをそろえる方針だ。
また、国内メーカーでは先行する日産が1回の充電で走行できる距離を400㌔に伸ばし、加速など走行性を改良したEV「リーフ」の新型モデルを発売。マツダが30年代前半にも全車を電動化モデルに、SUBARU(スバル)も20年度をめどにディーゼルエンジン車から撤退する方針を固めた。
構造はシンプル 雇用が減る恐れも
ガソリンなどを燃料とするエンジンは機関内で燃料を燃焼、生じた力を変速機などを通じて車輪に伝える複雑な仕組みのため、約3万点の部品が必要になる。この結果、下請けの部品企業などが必要になり、雇用の創出にもつながっていた。これに対して、電気自動車の構造はシンプルだ。基本的には電池とモーター、これをコントロールする制御機器があればよく、部品数はガソリン車に比べ極端に少ない。走行時に排ガスを出さない利点があるが、基幹部品となる電池の性能向上や車体に使用する新素材開発がこれからの課題だ。
自動車大国ドイツのメルケル首相は、英国やフランスが表明したディーゼル車・ガソリン車の販売禁止への追随を拒否しているが、背景には電気自動車への転換を促せば車産業が抱える80万人の雇用が脅かされることへの懸念があるとされる。
電気自動車普及への取り組みとともに、人工知能(AI)による自動運転技術の開発も加速している。ガソリンなどを燃料とするエンジンとの決別、それは長年親しんできた「自動車」の概念が大きく変わる時でもある。