息の合った演奏を見せた日本福祉大学付属高校和太鼓部(8月26日、東京・国立劇場)

 

郷土芸能部門で最優秀賞と文部科学大臣賞に選ばれた愛知・日本福祉大学付属高校和太鼓部「楽鼓(らっこ)」。26回目の全国高総文祭出場となった同部は、今回で11度目の入賞を果たし、最優秀賞の受賞は2度目となる。

披露した演目は、三浦綾子さんの小説「海嶺(かいれい)」の世界観を楽曲にした「絆~和太鼓組曲『海嶺』より~」。江戸時代、海難事故に見舞われた船乗りが日本に戻れず異国で暮らすまでの波乱の人生を、和太鼓や横笛の音色で叙情的に表現していく。演奏中盤では、長胴太鼓を滑らせてフォーメーションを変化させる舞台演出も光った。10年以上演奏している定番曲だが、今年は新たな太鼓のリズムや掛け声を加え、より迫力の増した楽曲に仕上げた。

週5日の練習では、上級生が下級生に和楽器の演奏を教える練習スタイルが伝統だ。47人の部員を引っ張るのが、部長の伊藤敏祐君(3年)と副部長の柴田栞奈さん(3年)だ。

本番直前、演奏が一変

総文祭本番の数日前、伊藤君は3年生だけを集め、気合を入れるためにあえて厳しく声を掛けたという。「精神面を引き締めました。やはり3年生がしっかりしないと、後輩たちはついてきません」。部長の叱咤(しった)激励に3年生部員たちは気持ちの入った演奏で応え、「それまでと演奏がガラッと変わった」(伊藤君)

後輩も、練習に熱く取り組む先輩の姿勢に突き動かされ、本番で最高の演奏ができた。「演奏後、練習では感じたことのない達成感が込み上げてきました。部員の誰もが納得の演奏だったと思う」(柴田さん)

一番大きい「大太鼓」を担当する部長の伊藤君(右)と、「銅鑼」や「長胴太鼓」の奏者を務めた副部長の柴田さん(左)