第46回全国高校総合文化祭(とうきょう総文2022)郷土芸能部門の「和太鼓部門」で、日本福祉大学付属高校(愛知)和太鼓部「楽鼓(らっこ)」が5年ぶり3度目となる最優秀賞・文部科学大臣賞を受賞。8月末、東京・国立劇場で行われた優秀校公演でも演奏した。日本一になるまでの道のりを聞いた。(文・写真 中田宗孝)

小説の世界観を和太鼓で表現

全国大会で披露したのは、部の代表曲の一つとして長く演奏している「絆~和太鼓組曲『海嶺』より~」。三浦綾子さんの小説「海嶺(かいれい)」の世界観がテーマだ。

江戸時代、海難事故に見舞われた船乗りが日本に戻れず異国で暮らすまでの波乱の人生を、和太鼓や横笛の音色で叙情的に表現。心震わせる太鼓の轟音、中盤に奏でる笛や法螺(ほら)の音色も力強い楽曲に彩りを添えた。

部長の水野真帆さん(3年)は「集中しきれてないと、(演奏時間の)8分が長いなと感じるんですけど、この日はただただ楽しかった。最高でした」と完全燃焼した様子だった。

躍動感にあふれる「楽鼓」の演奏(8月25日、優秀校東京公演リハーサル)

話し合い重ねて曲の完成度UP

水野さんは「(先輩の代の比べると)やっぱりコロナの影響は大きかった」と全国大会までの道のりを振り返る。コロナ禍以前と比べると練習量は減り、複数のメンバーが参加できない日もあった。奏者の実力がグンと伸びるという外部公演の機会も減った。

そこで、部員たちで話し合いする機会をたくさん作ったという。「曲づくりについて、部員間で衝突したときはみんなが納得のいくかたちで解決して。コロナで出来なかったこともあったけど、それを部員全員で乗り越えてきたからこそ、今があると感じています」

 小説の世界観を和太鼓でダイナミックに表現した(8月25日、優秀校東京公演リハーサル)

周りに目を配る部長に成長

昨年、水野さんは「自分を変えたい」と思い、自ら立候補して部長に就いた。「それまでは周囲のことを考えて行動するのが苦手だったんです。でもそこを変えないと、自分のためにも、私たちの代、部全体としても良くない。まわりを常に意識する部長の立場になれば、今までの自分を絶対に変えていくだろうなって」

隣で苦楽をともにした副部長の高松柚月さん(3年)は、「率先して的確な指示を出してくれたり、部員一人一人に目を配っていたり。そんな、頼りがいのある姿勢を尊敬しているんです」と部長として成長した水野さんの一面を語った。

締太鼓・笛を担当した水野さん(右)と、長胴太鼓・笛・法螺を演奏した高松さん。コロナ禍のため肩を組んで円陣が組めない代わりに、互いの太鼓のバチを握って円陣を作り、気合を入れて本番に臨んだ
【部活データ】1988年創部。部員60人(3年生14人、2年生19人、1年生27人)。全国高校総合文化祭に31年連続出場を果たし、うち14回入賞(最優秀賞3回、優秀賞3回、優良賞8回)。優秀校東京公演は、今回で6回目の出場となる。