1年時にキャッチャーを経験し「配球の幅が広がった」と言う築山雄介投手

甲子園準優勝の経験を持つ奥本保昭監督が9年前に着任してから着実に力をつけてきた塔南(京都)。今年の春季京都府大会では初の決勝進出も果たし、甲子園初出場への期待が高まっている。躍進を生み出したのが、クタクタの状態で行う走り込み。培った持久力を武器に、夏の暑さを吹き飛ばす戦いを見せるつもりだ。(文・写真 白井邦彦)

練習後にダッシュ

かつて京都成章を甲子園準優勝へ導いた奥本監督を慕って選手が集まり、公立校ながら京都府では何度も8強に名を連ねるまでに成長した。

今年は、体力の限界までトレーニングする「追い込み練習」の開始時期を、例年の6月から2カ月ほど前倒し。春季大会の試合前日でも休むことなく、厳しい走り込みをこなしてきた。全ては夏の暑さに負けないためだ。日々の練習は、マシンを使った打撃練習やノック練習などオーソドックスだが、ヘトヘトになるまで練習し、最後の仕上げに行う走り込みは決して楽ではない。

春季府大会で「エースで4番」を任された築山雄介(3年)は「負けず嫌いなので、練習の最後にやる30〜50メートルダッシュも必死に走ってきた。さすがに20本もあるときは苦しかったけれど、そのおかげで持久力が増し、春季府大会では最後まで集中して投げられた」と言う。

「自分が先頭に立つ」を胸に全力で練習する尾崎出雲主将

ミスする限り続くノック

走り込み以外にも、塔南には名物練習がある。「連続27アウト」と呼ばれる地獄のノック練習だ。1試合で必要な27個のアウトが取れるまで続く。誰かがミスをすれば、またカウントは1に逆戻り。つまり、ミスをする限り練習が終わらないという厳しいもの。

春季府大会準決勝で劇的なサヨナラ本塁打を放った主将の尾崎出雲(3年)はこう話す。「ダッシュも連続27アウトも、声を掛けないと手を抜く選手も出てくる。それでは上に行けないし、嫌われてもいいから厳しく言ってきた。個人的には、2年半ずっと夢見てきた甲子園へのチャンスは今年が最後。何が何でも行きたい」

夏の高校野球京都府大会は7月9日に開幕。築山は「自分は、やるときはやる男。みんなを甲子園に連れていく」と目を光らせた。

勉強も野球も100%で!(奥本保昭監督)

 

名物練習「連続27アウト」は、毎日やるものではありません。大一番の前など、選手たちに「一球の大切さ」を再確認させたいときに抜き打ちで行っています。

部のスローガン「文武一貫」は、勉強と部活を両立させることではなく、どちらも100%で取り組むことを目標にした言葉です。どちらも手を抜かないことで、初めて周りから応援されるような人間になれるものです。部員には、人に気を使わせるのではなく、気を使う人になってほしい。野球というスポーツを通じて、社会に貢献できる人を育てたい一心で指導しています。

 
【TEAM DATA】
1963年創部。部員79人(3年生27人、2年生29人、1年生23人)。2010年の秋季京都府大会優勝、春秋を通して過去10年でベスト4以上が5回。08年、09年には選抜高校野球「21世紀枠」京都府代表に選ばれたが、センバツ出場は惜しくも逃した。OBに駒月仁人(埼玉西武ライオンズ)がいる。