図抜けた個人技の高さで観客を驚かせた平良陽汰主将(3年) 

全国高校総合体育大会(インターハイ)バスケットボール競技は、男女2回戦が7月29日にあづま総合体育館(福島)などで男女2回戦が行われた。興南(沖縄)は正智深谷(埼玉)に61-88で敗れたが、個性を尊重するチームの持ち味を随所に発揮した。(文・写真 青木美帆)

個性尊重、歌もコントも

前半終了まであと4秒、正智深谷ボールのスローインという場面で、興南の応援席からこんな声が飛んだ。

「あと4秒、面白いことをやろう!」

普通だったら「しっかり守り切ろう」といった類の言葉がかかりそうな場面で、面白さを呼びかけるとはユニークだ。

井上公男コーチにそう伝えると、「他のチームにないこと、誰も考えないようなことをイメージして、アジャストしてやろうと言っています。どんなことでも自分たちで考えてクリエーティブにやろうと」とチームのカラーを説明してくれた。

「どんなことでも」にはバスケット以外のことも当てはまる。タイムアウト中には沖縄県民ならだれでも知っているという名曲「ダイナミック琉球」を朗々と歌い上げ、ハーフタイムにはコントまで演じた。井上コーチは「コントは県予選のあとに、インターハイでやろうと考えたみたいです。僕も昨日(の1回戦で)、初めて見ました」と笑った。

「ダイナミック琉球」を歌う応援団

沖縄のバスケットが内包する独特のリズムと、こうした個性を尊重する方針にひかれ、ここ2、3年で沖縄県外からチームの門をたたく選手も出てきた。

2年生の伊藤康雄も東京の中学校からやってきた1人。「暑いし、浴室に湯船がないし、お年寄りの言葉がわからないです」と「ナイチャー(沖縄以外の土地の人)」ならではのカルチャーショックに戸惑いつつも、「息を合わせるプレーや沖縄らしいプレーを早く身に付けたい」と日々奮闘している。

沖縄らしいバスケットを必死に勉強中の伊藤康雄

ウインターカップで躍進狙う

今大会は2回戦敗退に終わったが、チームにはウインターカップでもっと上を狙うという前向きな意欲であふれている。井上コーチは、シュートの精度、基本を徹底したリバウンドからの速い展開につなげるプレーの継続、そしてメンバー全体の実力の底上げを課題に挙げ、「冬を楽しみしてください」とにっこり。儀間雄山(3年)も「ウインターカップでの躍進に期待してください!」と力強く宣言した。

チームプレーの随所にちりばめられた華やかな個人技と、試合を離れたところでも発揮されるクリエーティビティ。12月の東京体育館で、レベルアップした彼らに再会するのが今から楽しみだ。