分析でチームに貢献した井戸井響(左)と鈴木智雄

7月27日に開幕した全国高校総合体育大会(インターハイ)バスケットボール競技。28日はあづま総合体育館(福島)などで男女1回戦が行われ、桐光学園(神奈川)は大阪学院(大阪)に85-72で勝利した。(文・写真 青木美帆)

相手チームの特徴を洗い出す

7月25日、インターハイに出発する直前の桐光学園を訪ねた。選手たちがしきりにホワイトボードを確認しているので、いったい何が書かれているのか気になり、のぞき見させてもらった。そこには赤字で無数の書き込みがされていた。

「1対1を中心とするチーム」、「ゴール下の合わせを作れるチーム」、「2-3ゾーン」、「アウトサイドシュートがよく入る」…。

これらのキーワードは、インターハイの初戦で対戦する大阪学院の特徴を記したものだった。

インターハイでベスト8に進出した昨年のチームと比べて、今年のチームは少し力に劣る。その差を埋めるためにできることはないかと、部員全員で考えた結果の一つが「分析」だった。

伊藤航大主将(3年)が分析の立役者として挙げたのが、井戸井響(3年)と今大会マネジャーとしてエントリーした鈴木智雄(3年)だ。井戸井が試合映像を繰り返し見て重要だと感じたプレーを、鈴木がパソコンで編集。エントリー外の選手たちも部室に集まり、練習時間を割いて相手チームの特徴を洗い出した。

「去年は分析の得意な先輩が一人でやってくれていたけれど、今年はそういう人がいないから、みんなで分担して、ちょっとずつやろうと話し合いました」と鈴木は言う。

リバウンド、ルーズボール、ディフェンスと地味なプレーでチームを支えた伊藤航大主将

試合中もタブレット駆使し分析

桐光学園は序盤から試合の主導権を握り、その勢いのまま勝利した。

26日に福島入りしてからも大阪学院の映像を見続けた井戸井は、前日のミーティングで的確なゲームプランを提案した。試合中スコアラーを務めた鈴木は、タブレット端末でリアルタイムに相手チームのデータを算出し、タイムアウトのたびに各選手に伝え、ディフェンスのアドバイスを送った。

「途中はもたついてしまったけど、ゲームの入りと全体的な展開がよかったのは2人のおかげです」。エースの宮本一樹(3年)もその活躍をたたえた。

2回戦の相手は地元の福島東稜(福島)だ。

「AチームとBチームの宿舎が分かれているんですが、Aチームが今日の試合を反省している間、Bチームは福島東稜の今日の試合を見て分析する予定です」(鈴木)。分析の成果は翌朝のミーティングで全員が知ることとなる。

エントリーメンバーの力は昨年より劣るかもしれない。しかし、エントリー外の選手を含めたより大きな「チーム」の力で、先輩越えの成績を目指す。