練習では会6秒以上を保つために、時計で計測しながら矢を射る

 

支え合って戴冠

昨年12月、全国高校弓道選抜大会の女子団体で優勝した甲南女(兵庫)。中学時代から一緒に体と心を鍛えてきた仲間たちは、インターハイ制覇に向けて集中力を高めている。

昨年度のインターハイは1回戦で敗れた。主将の土井恵璃奈(3年)は「自分のことで精いっぱいの状態でした」と振り返る。選抜大会は悔しさを胸に挑んだ。「気合も入っていたし、チームを最優先に考えられたので、本当にうれしい優勝になりました」と笑顔で語る。

団体としての強みはチームワーク。岡野美柚(2年)は「中高一貫で長い時間を共にしてきたので、お互いの良い部分も悪い部分も知っている。だから練習でも試合でも支え合える」と話す。

とはいえ、団体メンバー入りの競争は激しく、悔しい思いをする選手も少なくない。今年のインターハイ予選で初めて団体メンバー入りした池田彩乃(3年)もその一人だ。「今まではメンバー選考の場にも立てませんでした。でも、昨年のインターハイを見ていて『来年は中高6年間の集大成の年。絶対にメンバーに入る』と決めました。一本でも多く、と練習で矢を射ってきました」

「会6秒以上」を徹底

興味深い部の方針に「会6秒以上」がある。「会」とは矢を射る直前の形(引き分け)で静止した状態を指す。全身の筋力が必要で、女子高校生で6秒以上をキープするのは至難の業。吉野裕賀(2年)は「甲南女では、筋力トレーニングは中学で済ませ、高校では精神面を鍛えます。会が6秒以上できるのも、そんな背景があるからだと思います」と説明する。

弓道部がこのテーマを掲げたのは3年前。緊張から本来の実力を発揮できない選手を見て、川久保亘監督が「勝敗とか、相手とかではなく、ただ会6秒以上に意識を集中させよう」と取り入れた。昨年のインターハイ以降は、練習でも試合でもタイムを計測。すると結果も出始めた。

団体戦の1番手という重要な役割を担う向下奈桜(3年)は「昨年のインターハイは、相手が気になったことで悪い流れをつくってしまいました。でも、会6秒以上をより強く意識することで、余計なことで気持ちが乱れなくなりました」と効果を口にする。

冬の全国制覇も、会6秒以上によるところが大きい。とはいえ、思うような結果を残せていない選手もいる。奥野久美子(3年)は「インターハイ県予選ではみんなに助けてもらい、悔いが残りました。本番ではしっかり、会6秒以上に集中して結果を残したい」と意気込む。 (文・写真 白井邦彦)

TEAM DATA

甲南女弓道部 1953年創部。部員20人(3年生7人、2年生11人、1年生2人)。2010年のインターハイ女子個人で優勝者を輩出。16年の全国選抜大会は女子団体で優勝し、技能優秀校を受賞、女子個人でも向下奈桜が3位に入った。