「パナマ文書」の波紋が世界中に広がっている。厚いベールに覆われてきた課税逃れの実態を暴く手掛かりになる資料で、戦々恐々としている著名人や企業もいるようだ。5月の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)でも課税逃れ問題は議題になり、各国首脳は情報共有などの対策を強化することで合意した。

 Q  「パナマ文書」って何?

タックスヘイブン(MEMO参照)での法人設立を代行してきた、中米パナマの法律事務所の内部文書。租税回避地で設立した法人の資料が記載されている。匿名の人物がドイツの新聞社に提供、この新聞社が世界の記者が連携する国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)に合同調査を要請していた。

ICIJはパナマ文書に基づいて作成したリストを5月に公表、これには約21万の回避地法人と、それに関する約36万の個人や企業の名前、住所が載っていた。既に約80カ国で100を超える報道機関が調査に参加しており、今後さらに新たな事実が出てくる可能性が強い。

 Q  どんな人、企業が?

リストは国ごとに分類され、回避地法人の所在地や設立年月日、株主なども記載されている。ロシアのプーチン大統領や中国の習近平国家主席ら各国首脳の親族、サッカーのメッシ選手らの名前もあった。

日本に関係する法人は少なくとも270社あり、32都道府県の日本人約230人、外国人約80人、企業約20社の名前が挙がった。大手商社や通信大手なども含まれているが、いずれも「租税回避を目的としたものではない」と説明している。

 Q  違法なの?

租税回避地に法人を設立すること自体は違法ではない。だが、回避地は情報をほとんど公表しないため、多国籍企業や富裕層の課税逃れ、テロ資金や犯罪収益の隠し場所、マネーロンダリング(資金洗浄)に悪用されているとしばしば指摘される。

MEMO 
タックスヘイブン(租税回避地) 税金がないか、税率を非常に低く設定している国や地域。パナマやケイマン諸島が有名。産業の乏しい国などが外貨獲得を目的に行っていることが多い。

(高校生新聞 2016年6月号から)