高校生が伝統文化を継承し、新たな価値を創造

「第8回『地域の伝承文化に学ぶ』コンテスト」(國學院大學・高校生新聞社主催)の表彰式が2012年12月2日、同大学渋谷キャンパスで開催された。応募作品は前回の倍の650点にのぼり、団体・個人とも各20点が入賞した。

創立130周年を迎えた國學院大學は、日本民俗学の創始者である柳田國男や、民俗学者のほか詩人・歌人としても名高い折口信夫も教授を務めた伝統ある大学。同コンテストは高校生を対象に、伝説や祭りなど昔から各地に伝わる文化の研究レポートやそれらをもとにした創作民話を募集するものである。高校生に地域研究を発表する機会を持ってもらうとともに、同大学が持つ伝承文化に関する資産に触れてもらうことも目的としている。

表彰式では冒頭、主催者を代表して赤井益久学長があいさつ。同コンテストの研究成果は、「伝統文化を継承して、そこに学びながら新たな価値を創造していく」という國學院大學の建学の精神と合致することに触れ、「これからも伝統文化、また地域に根ざした伝承文化に温かいまなざしを向けて研究を続けてほしい」と述べた。続いて来賓祝辞、表彰状授与が行われ、その後、初の試みとして優秀作品プレゼンテーションが行われた。各部門の最優秀賞に選ばれた作品を手がけた高校生たちが、受賞作の研究・創作に取り組んだ経緯やそれを通じて学んだことなどを発表した。

全体講評と研究レポート部門の講評を行った小川直之國學院大學教授は、研究・創作いずれの活動でも重要な姿勢として、「自らが積極的に歩く、見る、聞く、そして表現すること」「主題を明確にすること」「自分と社会とのかかわりを持つこと」の3つを挙げた。小川教授は「この3つのことを考えながら今後も持続してほしい」と受賞者たちにエールを送った。その後、日本大学大学院の西角井正大講師が映像作品の講評を、また國學院大學の佐藤美穗客員教授が民話創作部門の講評を行った。表彰式の後は懇親会が開かれ、受賞者らは全国の仲間との語らいなどを楽しんだ。

各部門の受賞作品の概要は下記の通り

 ■研究レポート部門最優秀賞

三島北高校郷土研究部2年生、東京大学教育学部附属中等教育学校6年生が受賞

研究レポート部門団体の部の最優秀賞は、静岡県立三島北高校郷土研究部2年の「三島市・清水町・長泉町の庚申塔について」が受賞。8 人の部員が文献調査や数十カ所の庚申塔の現地調査などを行った。民家の敷地内にある庚申塔などを探すのに苦労したそうだが、代表の鷲巣雄刀さん(2年)は「こんなに身近にいっぱいあった」と、地元の新たな一面を知った喜びを語っていた。

同部門個人の部最優秀賞に輝いたのは、東京大学教育学部附属中等教育学校6年の加賀若菜さんによる「今に伝わる祭りの魅力~住吉神社例大祭を中心に~」。この作品は、全受賞作から一つ選ばれる折口信夫賞も受賞した。加賀さんは「祭りによってつながれている佃島の人々の絆の強さを体感し、祭りの意義や価値を知ることができました」と振り返る。

■民話創作部門最優秀賞

高崎経済大学附属高校2年生2人、浦和高校1年生が受賞

民話創作部門団体の部の最優秀賞を受賞したのは、高崎市立高崎経済大学附属高校2年の田村綾華さん、佐藤麻衣さんの「ぐんまむかしばなし」。彼女たちは群馬の民話について調べることから始め、「文福茶釜」「上州のデーラン坊」を取り上げることにし、子どもたちにも親しんでもらおうと絵本にまとめた。「調べていくうちにだんだん深くわかる、その過程がおもしろかった」という。

同部門個人の部最優秀賞は、さいたま市立浦和高校1年の小池絵千花さんの「平玉神社」。2人の少女が地元の史跡を調査する話で、舞台となる神社は小池さんの自宅の近所にある。史跡巡りが趣味という小池さんはこの神社に何度も通った。「受賞できるなんて」と驚いている様子だったが、今後も創作活動を続けていきたいと抱負を語っていた。