抗生物質(抗菌薬)が効かない細菌、薬剤耐性菌が世界の医療現場で拡大、大きな問題になっている。世界保健機関(WHO)や欧米諸国は「(抗菌薬を)本当に必要なときに正しく使う」適正使用の啓発に取り組んでおり、日本も本腰を入れる。

年間70万人が死亡

耐性菌が出現する仕組みは完全には解明されていないが、安易な抗菌薬の使用や、治療の途中で服用をやめるなど不適切な使用を続けると、耐性菌が増えて治療が困難になることはほぼ間違いないとされている。

研究チームの推計では、耐性菌による死者は世界で年間70万人、2050年には1000万人に膨らむ。国内でも1980年代以降、免疫が低下した患者が多い病院内で問題になってきたが、健康な人にとっては深刻視されてこなかった。

薬の適正使用と手洗いを

だが国内でも、抗菌薬で簡単に治療できたありふれた病気が治りにくくなる例が増えている。大半の子どもが3歳までに一度はかかるといわれる中耳炎も一例で、5〜7割が耐性菌という報告がある。ぼうこう炎を起こす大腸菌も第1選択薬とされた抗菌薬の耐性菌が増え、治療の選択肢が狭まっているとされる。

WHOは今年11月14〜20日を耐性菌問題の啓発週間と定め、抗菌薬の適正使用や、手洗いなどで感染症を予防する大切さを訴えている。