審査員長(中学生の部)の尾木直樹さんと受賞者たち

開発途上国と日本との関係や、国際社会の中で自分たちがどのように行動すべきかを中高生が考えて表現する「JICA国際協力中学生・高校生エッセイコンテスト2016」(国際協力機構主催)の入賞者が決まり、2月18日にJICA地球ひろば(東京)で表彰式が開かれた。

中学生の部は5万人、高校生の部は3万人が応募

今回のテーマは「未来の地球のために~私たち一人一人にできること~」。21回目の開催となった中学生の部は5万727人から、55回目の高校生の部は3万87人から応募があった。審査員長は、中学生の部は教育評論家で法政大学教授の尾木直樹さんが、高校生の部は女優でエッセイストの星野知子さんが務めた。

JICA国際協力エッセイコンテストの入賞者たち

脇さん「ポリオ撲滅」を訴え

中学生の部の最優秀賞(国際協力機構理事長賞)に選ばれたのは、脇捺夢(なつめ)さん(滋賀県立守山中学校2年)の「小さな私にできること」。手足に麻痺が残る感染症、ポリオの撲滅を訴えたエッセイだ。かつて日本ではポリオの予防接種に、発症の可能性がわずかにある生ワクチンを使っており、脇さんの弟は生ワクチンの副作用でポリオを発症し、今も右足が不自由という。脇さんが小学生になった頃に、発症の恐れがない不活化ワクチンの導入を求める署名運動が患者や家族によって始まり、4万人以上の署名が集まった。自身の家族から知人を通して署名の輪が広まる様子を見聞きし、国が不活化ワクチンの導入を決めたことから「始めは小さな声だとしても、いつかは大きな国を動かす力にもなるということを学びました」とエッセイに綴った。だが、今なお海外では野生株のポリオウイルスがある。脇さんは「これ以上、ポリオで苦しむ人を増やさないために、弟のことを通じてポリオを一人でも多くの人に伝えていきたい」と決意を込めた。表彰式のスピーチでも「募金などでワクチンが届けば、救われる人がいる。エッセイを読んだ人がポリオについて伝えてくれれば」と支援の広がりを訴えた。

眞崎さん「相手の立場に寄り添う心を」思い綴る

高校生の部の最優秀賞(国際協力機構理事長賞)は、眞崎由梨佳さん(佐賀・弘学館高校2年)の「今、私にできること」。ボランティア団体が主催する活動に参加したことをきっかけに、国際協力に必要な「心」について考えたエッセイだ。参加したのは、軍事政権から逃れた人が暮らすミャンマー難民キャンプの子どもたちに絵本を贈る活動。眞崎さんは、絵本に子どもたちが読める言葉のシールを貼る作業を続けたが、絵本に描かれた公園や街並み、ふかふかのベッドなどの場面に続き、最後のページにある男の子の「ここがぼくのいるところ」という言葉を見て心が痛んだという。「祖国を知らない彼らは、何を思うのだろう」。エッセイでは、「国際理解、国際協力は『私たち目線』でいるうちは本物ではないと思う。『心』だ。相手の立場に寄り添う心。相手の思いに本気で向き合う心。そこから最初の一歩は始めるものだと思う」と続けた。その後、仲間たちと古着を集めて海外に送るなど、新たなボランティア活動を始めたという。表彰式では「将来、国際協力の仕事に就きたい。そのために経験を積み、視野を広げたい」と目標を語った。

入賞作品は、JICAのウェブサイトに掲載されている。2017年度の作品募集は、6月からの予定。

 

入賞者は次の通り(敬称略)。

【中学生の部】
▽最優秀賞(国際協力機構理事長賞) 脇捺夢(滋賀県立守山中学校2年)
▽最優秀賞(外務大臣賞) 平尾織花(秋田大学教育文化学部附属中学校1年)
▽優秀賞 木下春香(愛媛・松山市立鴨川中学校3年)、大浦向日葵(長崎・聖和女子学院中学校3年)
▽審査員特別賞 富木南葉(東京学芸大学附属国際中等教育学校2年)、甲斐嗣弓(東京・小平市立花小金井南中学校3年)、石﨑侑(富山・高岡市立伏木中学校3年)、橋本七帆(宮崎市立大淀中学校3年)
▽国際協力特別賞 菊地留香(岩手・大船渡市立吉浜中学校2年)、新井彩香(埼玉・春日部共栄中学校3年)、村田主喜(東京・目黒区立第十中学校2年)、森田寛大(東京・お茶の水女子大学附属中学校3年)、梶村あゆみ(神奈川県立相模原中等教育学校1年)、高﨑 千実(福井・坂井市立坂井中学校3年)、猪野日向(滋賀・立命館守山中学校2年)、岸本 皐汰(大阪教育大学附属天王寺中学校3年)、山下莉弥奈(香川・善通寺市立西中学校1年)、古波蔵笑美(沖縄・豊見城市立長嶺中学校1年)

【高校生の部】
▽最優秀賞(国際協力機構理事長賞) 眞崎由梨佳(佐賀・弘学館高校2年)
▽最優秀賞(外務大臣賞) 半田翔也(兵庫・関西学院高等部3年)
▽最優秀賞(文部科学大臣賞) 柴田藍(東京・順天高校2年)
▽優秀賞 冨永康介(千葉・渋谷教育学園幕張高校1年)、藤戸美妃(関西学院千里国際高等部1年)、神谷和輝(島根県立出雲高校2年)
▽審査員特別賞 成瀬流奈(秋田県立湯沢高校3年)、船山真里(栃木県立宇都宮工業高校 2年)、米山帆波(三重・セントヨゼフ女子学園高校3年)、池内瑛美(岡山県立岡山城東高校3年)
▽国際協力特別賞 大嶋美春(北海道札幌国際情報高校2年)、森本錬(北海道帯広農業高校2年)、渡會奏(山形県立鶴岡北高校1年)、山崎真由(東京都立小石川中等教育学校6年)、平川楓(神奈川県立弥栄高校1年)、渡邉英瑠(石川・金沢大学附属高校2年)、井戸美月(愛知県立千種高校1年)、奥本大也(京都産業大学附属高校3年)、松山亜希(長崎・聖和女子学院高校2年)、上間涼音(沖縄・昭和薬科大学附属高校1年)