ボランティア活動に取り組む中高生をたたえる第18回ボランティア・スピリット賞(アワード)の全国表彰式が12月27日、大阪国際会議場で開かれた。参加したのは、全国1831件(4万4200人)の応募から選ばれた中高生40人。文部科学大臣賞などが表彰され、5月の全米表彰式に「日本代表」として参加する「米国ボランティア親善大使」2人も選ばれた。
(高校生記者・魚住あかり)
児童向けにキャンプ
文部科学大臣賞を受賞したのは、斉藤涼太郎さん(北海道旭川東高校3年)が2013年に設立した中高生団体「FLEAD」だ。団体名は「Future Leader」の略。子どものコミュニケーション力が下がったといわれる今、「子どもたちが、いろいろな経験ができる機会をつくりたい」という思いで、さまざまな活動を続ける。
昨夏には、児童が泊まりがけで参加する「ワイルドキャンプ」を主催。「キャンプ参加者の自主性を尊重し、楽しむ場を提供する」ことを念頭に置き、水鉄砲を使ったレクリエーションでは「あえてルールを作らない」など、参加者が楽しく遊べるよう工夫した。
物まね交え「出張弁論」
もう一人、文部科学大臣賞を受賞したのが大羽(おおは)健太郎さん(島根・益田東高校2年)だ。「病気や障がいのある人への差別や偏見をなくそう」と、福祉施設や学校、イベントなどで「出張弁論」を行っている。
この弁論は、スピーチにタレントや歌手の物まねを織り交ぜるユニークなもの。始めた理由は、母が精神の病を患っており、「人間はみな平等」と理解してほしかったからだ。「母のことを思ってつくった弁論が評価されてうれしい。母に良い報告ができる」と大羽さんは話した。
大羽さんは「みんなを引っ張れる」などと他の受賞者から評価され、受賞者同士の投票で親善大使にも選ばれた。米国で受ける物まねを準備する考えだ。
海外の子どもと交流
櫛部紗永さん(東京・早稲田実業学校高等部2年)も「圧倒的な行動力」と支持を集め、親善大使に選ばれた。世界を飛び回り、海外のストリートチルドレンなどと交流する活動が評価された。今まで訪れた場所で、最も印象に残ったのはバングラデシュのスラムだという。「外国に支援されなくても、自身の力で国を発展させていこうという熱気を感じた」そうだ。
スラムの多くの人がスマートフォンを使っているのには驚いた。「体験したからこそ分かったことを周囲に伝えたい」と櫛部さん。今後も、戦争や原爆、教育の問題を訴えていくつもりだ。
ボランティア・スピリット賞 青少年のボランティア活動を支援するために1995年から米国で開始。日本では97年からスタートした。日本の主催はプルデンシャル生命保険、ジブラルタ生命保険など。今回の受賞者は大阪に3日間滞在し、互いの活動を紹介し合ったり、パーティーに参加したりした。全米表彰式には米国各州と、日本など米国以外の国・地域の代表が参加する。
取材後記 取材した3人とも、受賞について「選ばれた責任と使命感がある」という言葉を使っていたことが印象に残った。同年代の高校生が日本の代表としての覚悟を固めている姿に圧倒された。 |