「アーッ!」「オーッ!」という気合の声と合掌礼に目がいく。体育館の一角。そこだけピンと張り詰めた空気は、武道の練習場ならではのものだ。
少林寺拳法は、技を組み合わせて演じる「演武」が5人の審査員によって採点される。3月に香川県で行われた全国高校少林寺拳法選抜大会に出場した同部は、2人1組で行う自由組演武で主将の高田京吾君と副将の豊田竜大君が優勝。自由単独演武で川島直央君が準優勝を果たした。
「団体演武では4位と、春夏5連覇で記録が止まりました。選手たちは号泣していましたが、出場した6人のうち4人が1年生(大会当時)。決して恥じることはない結果だと思います」と顧問の深野孝治先生。「勝つことより、そこに至るまでの努力が貴い。優勝したから偉いわけではありません」とも話す。
顧問になって15年になる深野先生自身に運動部の経験はない。「一生懸命に頑張る子どもたちが好きになって」勉強を重ね、全国上位を狙える環境を整えてきた。そんな深野先生に部員たちは「すごく優しくて、厳しい」(豊田君)、「胸にぐっとくるようなアドバイスをしてくれる」(高田君)と、心からの尊敬と信頼を寄せる。
練習では筋トレを重視。中でも徹底して行うのが拳立て(拳を使っての腕立て伏せ)だ。「最初は、頭の中が真っ白になるくらいつらかった。とにかく無我夢中でした」と豊田君。高田君も「夏合宿の最後の日、先輩に『よく頑張ったな』と言われて泣いてしまった」と2年前を振り返る。
入部した当初は10回もできなかった拳立てが、今では1時間でも続けられると胸を張る2人。筋力に裏付けられた正確な技術が身に付いたのはもちろん、厳しいトレーニングに耐え抜くことが大きな自信となった。
4月29日の県高校少林寺拳法大会では団体Aチームと高田・豊田組の組演武が優勝、単独演武の中村拓夢君(2年)が準優勝で、それぞれ全国大会出場権を得ている。「団体演武では一人一人の力をマックスに出しつつ、技を合わせることに挑戦したい」という豊田君。「春のチャンピオンとして、組演武は2連覇します」と力強く話した。 (文・写真 野口涼)
学校紹介
1984年創立。星野昭校長。生徒数1299人。大学・高校を通じて最大規模の体育館など充実した設備を誇る。