夏の甲子園の開会式。市西宮(兵庫)の女子生徒たちが各出場校の先頭に立ち、プラカードを手に行進する姿は、1949 年から続く伝統の光景だ。今夏も〝プラカードガール〟たちが熱戦を前に花を添えた。 ( 文・写真 中尾義理)

プラカードガールは例年、2年生が務めるが、今年の甲子園は、95回目の開催となった記念大会。歴代優勝校旗も開会式で行進するため、2年生65人に加え、1年生60人も甲子園の土を踏んだ。

7月に校内オーディションがあり、今年は2年生114人、1年生80人が参加した。2年生の応募率は毎年9割を超える。

オーディションで生徒は、プラカードに見立てた竹の棒を持って歩く。選考は、姿勢やリズム感が重視される。球児より目立つ歩き方はNG。主役である球児たちの胸躍る行進を引き立たせる存在感の加減が難しい。

 

選ばれた生徒たちは、2日間にわたって校内での全体練習に取り組んだ。指導歴17年目の青石尚子先生が、視線、指先、周囲との連携など細部まで目を光らせる。行進の練習中、青石先生からは「身長を5㌢伸ばすつもりで歩きなさい。そうすれば見栄えがよくなるから」などのアドバイスが飛んだ。

プラカードを持って甲子園を歩きたい。そんな憧れを持って入学する女子生徒は多い。過去には、祖母・母・本人の親子三代や4姉妹で、プラカードガールを務めた生徒もいた。 「市西宮でしかできないこと。その伝統に加わりたくて入学しました」と口をそろえるのは、2年生の梶原理恵子=兵庫・塩瀬中出身、三上史香=同・上ヶ原中出身、浜辺せりか=同・山口中出身=のバレーボール部トリオ。それぞれ、「前を向いて堂々と歩きたい」「開会式では横隊をそろえたい」「(甲子園まで)勝ち上がってきた選手たちをしっかり先導したい」と意気込んでいた。

8月8日の開会式。夏空の下、紺色のリボンがついた白い帽子が甲子園のグラウンドによく映えた。

「練習ではバラバラだったので心配しましたが、みんな笑って甲子園のグラウンドに出て行きました。堂々と、市西宮の伝統をつなげてくれた」と青石先生。白球のドラマが始まる舞台で、選手と一緒に胸を高鳴らせたことだろう。

表彰式と閉会式にも登場した彼女たち。今年の夏も、市西宮の伝統が甲子園に刻まれた。