実りの秋、食欲の秋。皆さん、キノコは好きですか? ご存じのとおりキノコは菌類で、秋になると原木の中の菌糸からニョキニョキ生えてくる、栄養価の高い食べ物だ。でも、「キノコは雷が落ちた所にたくさん生える」と言われていることは知らないのでは?
これは日本だけではなく、昔から世界各地で言い伝えられているんだ。
そこでその言い伝えを基に、キノコの原木に20万㌾の電気ショックを与える実験をしたところ、なんとキノコの発生量が2倍近くに増え、しかも大きく育つことが分かった。さらに、キノコに含まれる栄養素も増え、味もおいしくなったらしい(味覚に個人差はあるだろうけれど……)。でも、どうして電気ショックでキノコが増えるんだろう?
そこで、電気ショックを与えた原木内の菌糸を調べてみると、菌糸があちこちひび割れて、その切れ目から新しい菌糸がどんどん生えていることが分かった。どうやら電気ショックで菌糸を切られたキノコが身の危険を感じ、子孫を残そうと増えていくらしいんだ。台風で原木が大きく揺れたときも、揺れたショックで原木内の菌糸が切れて同じような現象が起こった。どうやら「危機的状況」が、キノコを増やす原因になっているようだ。
今後はこうした性質を利用して、高価なマツタケや漢方で珍重される冬虫夏草などの希少なキノコを増やす研究が進むそうだよ。マツタケがたくさん採れるようになったら、今より手に入りやすくなるかもね! (吉永恵子)
●取材協力 大賀祥治先生(九州大学 大学院農学研究院 教授)今回紹介した電気ショックとキノコ生産についての研究を進める「キノコ博士」。詳しくは先生のホームページ「キノコ博士のキノコミュージアム」を見てね。http://kenko-shien.com/ohga/rabo.html