北海学園札幌相撲部は部員4 人。団体戦の5人をそろえることができない中で、主将・加藤文彬(3年)=北海道・緑陽中出身=は仲間と共にインターハイに出場。気迫の取組を見せた。 (文・写真 南隆洋)

8月3日、長崎県平戸市の平戸文化センター相撲場。部はインターハイ相撲・団体予選3回戦で足立新田(東京)と対戦した。

中堅・加藤の相手は190㌢、120㌔。身長で15㌢、体重で22㌔も勝る巨漢。加藤は真正面からぶち当たったが、土俵際に押し込まれ、右足が俵にかかった。が、ここから、回り込んで押し返し、両手でつかんだ前まわしをグッと引きつけ寄り切った。

「ここで勝たなければ。 自分の力を出さずに負けられない」

追い込まれて力を爆発させた。 団体戦は予選で3試合戦い、チームは2-3、2-3、1-4で敗れたものの、加藤は全ての取組で勝利した。主将と北海道個人チャンピオンの面目を保った。

部員は3年生2人、1年生2人だけ。5人で戦う団体戦では、戦わずして相手に1勝を献上しなければならない。そんなハンディを克服して北海道予選を勝ち抜き、切り開いた「全国」への道だった。

大将で出場した同級生の尾崎優真 =同・浦河一中出身=は、1年生の終わりに膝の靭帯を損傷。3年生の5月までリハビリ生活を強いられた。そのため昨年は、土俵に上がれる部員は加藤と先輩の2人だけ。部の存続が危ぶまれる中で、一人で土俵に来る日もあった。四股踏み200回、すり足など基礎稽古を重ね、OBが来てくれた時には、思いきり胸にぶち当たった。尾崎には「戻って来いよ」と励まし続けた。

部活の危機を周囲の人々が支えてくれた。道大会エントリーの3人に満たなかった昨年6月、当時の生徒会長が〝にわか部員〟を買って出てくれて出場を果たすことができた。「加藤のため」と往復600㌔の距離を車で飛ばして稽古をつけに来るOBもいた。

竹越広志監督(53)の「ひるむな、逃げるな」「相手に敬意を」の言葉を胸に、加藤は少ない部員を引っ張り、地道に稽古を続けた。

「先輩たちが築いてきた伝統を守り、後輩に伝えなければとの思いで頑張った。みんなで『全国』の土俵に立つことができてうれしい。残る1年生に強くなってほしい」と表情を引き締めた。

かとう・ふみあき 1995 年7月28 日生まれ。小学5 年の時、北海道北広島市の大会で優勝したのがきっかけで相撲を始め、中学3 年で全道大会優勝。今年、北海道高校選手権個人戦を2連覇。175㌢、98㌔。