「YAOYOROZU」を囲む宇都宮高校地理部「KOKU-BOON」のメンバー。中央がリーダーの国分君

熱い心と冷静な頭脳で、ジオラマ(情景模型)作りに打ち込む男子たちがいる。ジオラマ甲子園と呼ばれる大会「ハイスクール国際ジオラマグランプリ」で2連覇を達成した栃木・宇都宮高校の地理部。ジオラマに取り組み始めてから、まだ2年足らずの快挙だ。
(文・写真 木部一成)

地元の田園風景を再現

3月下旬に静岡県浜松市で開催された同大会。地理部副部長・国分直仁君(現3年)率いる5人チーム「KOKU-BOON」制作の「YAOYOROZU」がグランプリを獲得した。

幅60センチ、奥行き40センチ、高さ40センチほどの空間に再現した田園風景は、栃木県北部をイメージした。大木が木陰をつくり、鳥が戯れ、草花が息づく自然。かやぶき屋根の家や神社も配し、人の暮らしも伝えた。

細部までこだわり抜いた構成は、大会来場者の人気投票でも1位に選ばれ、参加14作品中で抜きんでた評価を得る「圧勝」だった。

昨年も、県内の自然をテーマにしたKOKU-BOONの作品がグランプリだった。今年の目標は「去年を超えること」。そして「やり残したことをやってみる」だった。

費用節約、校内のコケも使用

手分けして県内各地を写真取材。題材を集め、全体のデザインを決めていく。彩度を近景で上げ、遠景では下げる絵画の技法「色彩遠近法」も用い、奥行き感を増した。「ほかの人のまねは絶対にしたくない」。国分君の心意気がメンバーに伝染するかたちで、アイデアは次々に生まれた。

材料は100円ショップで買った紙粘土や、校地内にはえる雑草やコケ。大木の葉は乾物屋でテングサを、かやぶきは釣具店でエゾシカの毛皮を入手するという、類のない工夫をちりばめた。費用は小遣いを出し合い、1万円台に抑えた。放課後、毎日1時間程度の作業をして、完成に4カ月をかけた。

歴史は浅いが急成長

地理部のジオラマ制作は、プラモデル好きの国分君が1年生で入部した後、自ら提唱して始めた。伝統は浅い。それでも現在の3年生は率直に意見を交わしながら技量を高め、後輩にノウハウを教える立場へと成長した。

3月の大会では、現2年生チーム「月見うどん」による、京急電鉄蒲田駅と箱根駅伝の情景を再現した「RUNNING!」も準グランプリを獲得。後輩は着実に育っている。「もう引退状態」と話す3年生だが、来年の大会はどうするのか。実は後ろ髪を引かれているようなのだ。

 部活データ 
部員50人(3年生17人、2年生14人、1年生19人)。地理の研究が基本だが、自由度が高く、部員でバンドを組んだりもする。「YAOYOROZU」を入部勧誘で披露したところ、絶大な効果を発揮した