鉄道模型作りに、情熱を燃やす高校生たちがいる。7月に東京ビックサイトで行われた、鉄道ジオラマの出来ばえを競う「第11回全国高校鉄道模型コンテスト2019」で披露された力作を紹介する。(文・写真 中田宗孝)

トンネル抜けると広がる田んぼにこだわり

城北高校(東京)鉄道研究部は、「麓の街の日常」と題した作品を5人で制作した。作り込んだ路線や風景に、特定のモデルはない。厚木蒼一郎君(2年)は、「『利用者はそれなり多い、赤字ではない路線』という設定だけ設けて、制作メンバー各々が作りたいジオラマをレイアウトの中に配置していきました」と話す。

山の中のトンネルを抜けると広がる田んぼの風景は、制作時間を要した。「苗を植える前の水田にしたのは、田園地帯の側を走る電車が“田んぼの水鏡”に写るようにするためです」(厚木君)。田んぼの水鏡に写る電車を撮影しようと、カメラを構える人々のミニチュアを配置した細かいアイデアも光る。

怪しげな中華料理屋や客足の絶えないラーメン店といった駅を降りた街の風景も楽しい

踏切の警報、エンジン音…運転体験できる工夫も

同校の作品は、市販のコントローラーを来場者が操作して、電車を走らせることができる。「踏切の警報音、気動車(エンジンを搭載し、自力走行ができる鉄道車両)のエンジン音をBGMとして流していました。運転体験したみなさんに喜んでもらえたようです」(厚木君)

約8カ月かけて完成させた。部長の千賀諒熙君(1年)は「僕が入部した中学の頃からの作品と比べても、一番クオリティが高い」と誇る。作品内の建物の中に組み込んだ電飾技術は「来年以降に生かしたい」と、千賀君は話す。作品は畳一畳分のスペースで鉄道模型を作る「一畳レイアウト部門」の優秀賞を受賞した。

締め切り直前までジオラマ制作に追われ、苦労をともにしたメンバーたち