大分・中津北高校書道部は「書の甲子園」と呼ばれる国際高校生選抜書展で今年度の団体優勝を決めた。個人でも、最高賞を含め受賞枠いっぱいの15人が入賞する快挙だ。入部者には書道初心者も多いが、教え合い、競い合うことで成長を遂げるという。「書の名門」の地位を築きつつある同部の練習の現場を訪ねた。
(文・写真 南隆洋)

感謝 感動 完遂

2学期制の中津北高校。秋季休暇中の10月22日、午前8時10分に部員30人全員が書道室にそろった。顧問の渡邉大嶽(たいがく)(本名・郁靖)先生に向かって「お願いします」と大きな声で深々と礼をして、練習が始まった。部屋に入る際に部員が脱いだスリッパは、隙間なくそろえて並べられ一分の乱れもない。
 「心正しからざれば、書正しからず」
 先生は部員に、書の技法を学ぶ前に徹底して「心を磨く」ことを求める。「支えてくださる全ての方々に感謝し、あらゆる物事に感動し、感動を与え、最後まで諦めずにやり遂げる」。部のモットーである感謝、感動、完遂の「3K」が「感動の書」のスタートになるという。

「書道ノート」で成長

濃紺の毛氈(もうせん)(敷物)を敷きつめた室内で、部員たちは、左に法帖(古い手本)を置き、筆を手に黙々と白い紙と向き合う。時折、渡邉先生が回って来て、一言二言注意し、筆を執って模範を示す。それに気付いた周囲の部員も、さっと注目し、ノートにメモを取る。
 入部時から全員が「書道ノート」を持ち、先生の言葉や筆運び、自分の目標や思い、反省などを毎日、書き続ける。先生はそれを読んで、赤ペンでアドバイスを返す。「上級生になると、1年生の時とモノを見る目、考えが変わり、書が高まる。まさに書は人なり」と先生。

書の技と心を磨く「書道ノート」。顧問の渡邉先生が朱筆を入れて返し、部員たちは何度も読み返す

教え合い、競い合う

 中学時代はサッカーやバスケットボール、柔道などに熱中していた部員も多いが、毎日の部活で書く実質的な時間は1時間半しかない。上達の秘訣(ひけつ)は、古典を手本に書く「臨書」だ。渡邉先生は入部者に楷書(かいしょ)、行・草書、隷書、木簡など、さまざまな書体の中から好きな書を選ばせ、「ひたすら書き、1つの書体を極める」ことを求める。部員たちは書体ごとのグループに分かれ、「巧(うま)い作品よりも良い作品」を目標に、互いに教え、競い合うことで、3年時に結果が出てくるという。
 今年度の「書の甲子園」で個人最高賞の文部科学大臣賞を受賞した前部長の小田知佳さん(3年)は「自分が好きな書体を好きなだけ書き、書いた分だけうまくなった。礼儀作法など当たり前のことの積み重ねが、日本一につながったと思う」と話す。

【TEAM DATA】
1996年、同好会として発足。2001年、部に昇格。部員30人(3年生11人、2年生11人、1年生8人)で、女子が27人。「書の甲子園」団体では、渡邉先生が赴任した翌年の07年と13年に準優勝、10年に優勝。個人の最高賞は過去3人。全国学生書道展でも個人最高賞の文部科学大臣賞2回受賞。部是は「書は人なり」。