3月20日に阪神甲子園球場で開幕する第88回選抜高校野球大会に、関東一(東京)が2年ぶりに出場する。昨年は個人能力の高い選手たちが奮起し、夏の甲子園で4強進出。今年の代は、自ら考えてプレーする判断力を磨き、チーム力で勝負する。
(文・茂野聡士、写真・幡原裕治)
“オコエ世代”から一新
昨夏の甲子園で関東一は、過去最高となるベスト4に進出した。「先輩たちは個々の力がすごくありました」と主将の村瀬佑斗(2年)。自らの代を「自分たちは一人で試合を決められるチームではありません」と表現する。
1つ上の学年にはオコエ瑠偉(東北楽天ゴールデンイーグルス)をはじめ、パワーと走力に特徴を持った選手が多く、ベンチ入りメンバーはほぼ最上級生だった。そのため新チームになった当初は、手探りの状態だった。
それでも秋季都大会では、先輩たちも果たせなかった優勝を達成。特に決勝は8回、9回と立て続けに2点を奪っての逆転勝ちだった。
判断力磨く
この勝負強さの源は、主軸の佐藤佑亮(2年)が「一人一人が内容の濃い練習を目指しています」と言うように、自ら考えてプレーする姿勢にある。米沢貴光監督は日々、部員に「野球を研究し、自ら考えてプレーしてほしい」と伝えているという。
監督の言葉は練習に反映されている。例えば走塁練習。投球マシンにわざとショートバウンドのボールを投げさせ、相手の捕手がはじいた場面を想定する。村瀬は「はじいた距離を見てスタートして、どれくらいなら次の塁を狙ってもセーフになるかを、個々人がつかむため」と説明する。判断力を磨くことで、個人の能力の差をカバーしようとしているのだ。
「自信ない」は長所
昨年11月の明治神宮大会は「守備での連係ミスが目立って」(村瀬)、初戦敗退に終わった。だが、この敗戦を生かそうと選手は再び前を向いた。「このチームは今も、いい意味で自信がないと思います。だからこそ『練習から精いっぱいやろう』という気持ちで取り組めているのでは」と米沢監督は見ている。
佐藤は、大舞台での目標について「チャレンジャーの気持ちを常に忘れず、目の前の相手に向かっていきたいと思います」と語る。一戦必勝の思いを貫き、優勝を目指す。
- 【TEAM DATA】
- 1927年創部。部員68人(2年生34人、1年生34人)=マネジャー女子13人含む。センバツ出場は6度目で、87年に準優勝。武田勝(北海道日本ハムファイターズ)、中村祐太(広島東洋カープ)らプロ選手を輩出している。