宙を舞うプリント、頭を抱える生徒……。タイトル通り、課題が「終わんねぇ!」という声が聞こえてきそうなこの作品は、第47回全国高校総合文化祭(2023かごしま総文)の写真部門に出品されました。撮影した田中大喜さん(愛知・天白高校3年)に、作品に込めた思いを聞きました。
「課題が終わらない」絶望を表現
―作品のテーマを教えてください。
「勉強に対する焦りと絶望」です。この写真を撮影した時期に定期テストがあり、勉強が嫌いな僕は膨大な量の課題に辟易(へきえき)していました。やっとの思いで定期テストを乗り越えても、普段の授業でも課題は出ます。やってもやっても出される課題……、「これを作品にしてしまえ」と思いました。
そう決めたら、すぐにどんな写真が良いかが浮かんできました。課題のプリントが辺り一面に舞っていて、真ん中で苦悶(くもん)の表情を浮かべる高校生がいる。舞い散るプリントは焦りを、高校生の表情で絶望を表しています。この作品を見て、少しでも共感していただければとてもうれしいです。
―こだわったり工夫したりしたポイントはどこですか?
なんといっても舞い散るプリントです。最初はプリントではなく、教科書などを舞わせて撮影していました。ですが残像になって分かりにくかったうえ、モデルの友人が「教科書が頭に当たって痛い」と言っていて。「それはいけない」と、落ちるのが遅く、かつ頭に当たっても痛くないプリントに変えました。
モデルの表情にも気を付けました。少し顔色が違うだけで印象が変わってしまうのです。
プリントの投げ方を試行錯誤
―難しかった点、苦労した点はありますか?
投げたプリントの束の行く先は制御できません。100回以上は落ちたプリントを拾い集めたと思います。最初はモデルに投げさせていたんですが、何度繰り返しても真ん中の方にプリントがばらまかれず、なかなかうまくいきませんでした。最終的には、モデル以外の友達2人に頼んで、カメラに映らない場所から左右に分かれてプリントを投げてもらいました。
―制作中、印象に残っているエピソードはありますか?
モデルを務めてくれた友達とは仲が良く、学校以外でも一緒に遊ぶくらいです。撮影中もお互いに意見を出しながら完成させたことが一番印象に残っています。最初は教科書を投げていたので、落ちた時にかなり大きい音が出ました。それを何度も繰り返していたので、「周囲は『変人だな』って思っているかもしれないな」と笑い合いました。この撮影でさらに仲が深まったかなと思っています。
「想像通りの写真」を目指して
―よい作品を作るためのコツを教えてください。
スマホの普及で写真を撮ることが増えたと思います。みんなとの集合写真、いい景色を見たとき……。撮れた写真と自分が想像していた写真は、割と違うことがあると思うんです。想像と現実の写真でギャップがあるというか。
撮りたいものを何度も何度も撮って、このギャップをなるべく小さくしようとしてみてください。「あそこが違う」「ここも違う」「想像通りにするにはどうすればいい?」と追求するうちに、気が付いたら技術がついています。楽しんで上達してください。