東京大学など国立8大学が「情報学」を中高生らにアピールする共同イベントを2024年3月に初開催する。大学教員や学生の生の声を10代に届けることで、情報学の魅力や社会課題の解決に役立っている現状を知ってもらうのが狙い。学生の女性比率が極端に低いことへの危機感があり、女子中高生の参加をとりわけ期待しているという。(西健太郎)

オンラインと各大学会場で開催

イベントの正式名称は「女子も男子も、迷っているあなたにも、情報学を目指してほしいから 8大学同時共同開催 情報学for all by all」。開催するのは、北海道大学、東北大学、東京大学、東京工業大学(10月から東京科学大学)、名古屋大学、京都大学、大阪大学、九州大学の国立大学法人8校の情報系の大学院研究科。3月17日(日)午後2時から各大学の会場とオンラインのハイブリッド方式で開かれる。中高生や保護者、中高教員の参加を想定している。

教員・学生と語り合える、研究室ツアーも

「オンライン会場」では、8大学の教員と学生が情報学各分野の魅力や学生生活などをリレートーク形式で語り、後半で参加者の質問に答える。8大学のキャンパスに設けられた会場では、オンラインのリレートークを視聴したうえで、後半で各大学の教員・学生と対面で語り合う。座談会や研究室ツアーなど大学により内容が異なる。東京工業大は、「女子枠」入試を始めたことをふまえ、今回は参加者を女子に限定する。

国立8大学が「情報学」PRイベントを共同開催する(主催者提供)

生成AI浸透しても情報学の魅力が伝わらず

生成AIの浸透をはじめとして情報学に注目が集まり、高校で「情報Ⅰ」が必修科目になる半面、10代に学問としての情報学の魅力が十分に伝わっていないとの懸念が大学側にはある。

8大学の中には、情報学を冠した学部を持たず、理学部や工学部などの卒業者を情報系の大学院で受け入れているケースも少なくなく、これまで中高生に直接広報する機会は少なかったという。東京大学大学院情報理工学系研究科の須田礼仁研究科長は「8大学が協力することで、情報学の広い分野をカバーできる」と語る。8大学以外の志望者にも役立つ内容になるという。

女性比率の低さ「日本は極端」

東大の同研究科の修士課程段階の女性比率は6.7%といい、他大学の情報系大学院の女性比率も1割前後というケースが多い。「(情報学の女性比率の偏りが)日本ほど極端な国は珍しい。ダイバーシティが新しい情報学をつくる力になる。女子に限定したイベントではないが、女子にぜひ来てほしい」と須田研究科長は話す。

情報学のPRイベントについて説明する東京大学大学院情報理工学系研究科の須田礼仁研究科長(右)

米国の人気職業上位は情報系

北海道大学大学院情報科学研究院長の長谷山美紀研究科長は「情報学は物理学や化学などと比べて新しく、(中高生への)理解が進んでいない。数学でも、物理でも、好きな事を入り口に挑戦していける学問であることを知ってほしい」と話す。米国の人気職種ランキングの上位が情報系で占められていることを日本の中高生にも知ってほしいという。

友達、家族との参加も歓迎

イベントの詳細や申し込み方法は公式サイトから。友達や家族との参加も歓迎するという。対面会場は各校30~100人程度の定員を予定している。

開催8大学の情報系大学院は次の通り。北海道大学情報科学研究院、東北大学情報科学研究科、東京大学情報理工学系研究科、東京工業大学(10月から東京科学大学)情報理工学院、名古屋大学情報学研究科、京都大学情報学研究科、大阪大学情報科学研究科、九州大学システム情報科学研究院・学府