「日本学生支援機構」の奨学金を受けるには、学校成績や親の家計事情も含めて審査されます。奨学金アドバイザーの久米忠史さんに、「借りる奨学金」である貸与型奨学金に申し込む際の成績や世帯収入の基準、借りられる金額を教えてもらいました。(中田宗孝)

第一種は申込時までの成績を見られる

―奨学金を申し込めるかどうかの基準を教えてください。

日本学生支援機構の奨学金は、申し込み方法と奨学金の種類によって、成績基準・収入基準の内容が変わります。

―成績基準はありますか?

返還義務がある貸与型奨学金のうち、利子が付かない「第一種奨学金」を高校3年時に予約採用で申請する場合、「申込時までの成績」を見られます。高3の7月までに申請する場合は、通常高校1~2年生の成績が対象です。在学採用を申請する場合、大学1年生だと高校最後の2年の成績が、大学2年次以降だと大学の学部の成績が基準になります。

なお、住民税非課税世帯や生活保護を受けている世帯、児童養護施設の入所者など経済的に厳しい家庭など「社会的養護を必要とする人」と判断された場合は、「学習意欲がある者」として学校から推薦を受けると、成績基準を満たすものとして扱われます。要するに、成績基準は実質免除になるといってよいでしょう。

貸与型かつ利子のつく「第二種奨学金」の予約採用と在学採用の成績基準は、「学校における成績が平均水準以上の者」「特定の分野で特に優れた資質・能力を有する者」「学修に意欲があり、確実に修了できる見込みがある者」のいずれかに該当すれば採用されます。

第二種奨学金よりも第一種奨学金の方が成績基準が厳しい(予約採用は高3の7月までに申請する場合、在学採用の第一種奨学金の【新入生】は3年制の高校に通っていた人物が申請する場合を想定)

―収入基準は?

2024年度の進学(在学)者からは、保護者の住民税情報をもとに同機構が定めた「算定基準額」に該当するかどうかが審査されます。3人以上子どもがいる場合やひとり親世帯などは一定額が控除され、判定に有利にはたらきます。在学採用では、私立の大学・短期大学・専門学校などの自宅外通学の場合は、「私立自宅外控除」も適用されます。

予約採用の収入基準の例。家族構成や通っている大学の種類によって異なる

借りる金額は自分で選ぶ

―いくら借りられるのですか?

第一種奨学金は、ひと月に借りられる上限額が決まっています。家庭の収入基準により、「最高月額」と「最高月額以外の月額」の2区分に分かれています。第二種奨学金との「併用貸与」の家計基準を満たした家庭は「最高月額」を選択でき、その他の場合は設けられた金額の中から希望金額を選択する仕組みです。

「第二種奨学金(返還時に利子の付く有利子のお金)」は、学校の種別や通学環境にかかわらず、「ひと月2~12万円のうちから1万円単位」で自分の希望の額を自由に選択し、借りられます。

第一種奨学金は決められた額から、第二種奨学金は2~12万円の中から借りる金額を選ぶ(『もらえる! 借りる! 奨学金の完全活用ガイド2022』(合同出版)参考)

入学初年度のみ借りられる有利子の一時金「入学時特別増額貸与奨学金」は、10万円、20万円、30万円、40万円、50万円の中から借りる額を選択できます。この名称から入学前に奨学金を受けられそうな印象があると思いますが、実際振り込まれるのは「入学後」です。

―奨学金の振り込み日はいつですか?

2023年度の奨学金の振り込み時期は、4月分は4月21日、5月分は5月16日、それ以降の月は毎月11日の予定です。ですが、奨学金を受けるすべての学生が4月21日からお金を振り込まれるわけではないので注意が必要です。

振り込み開始日は、日本学生支援機構に「進学届」を提出した時期によって決まります。多くの場合は、5月~6月が初回の振込みと考えておいた方がいいでしょう。

 
久米忠史さん 
奨学金アドバイザー。株式会社まなびシード代表取締役。奨学金制度のスペシャリストとして、高校・大学で講演、全国各地での進路相談会を年間150回以上行う。最新共著『もらえる! 借りる! 奨学金の完全活用ガイド2022』(合同出版)。ホ―ムペ―ジ「奨学金なるほど!相談所」(https://shogakukin.jp/