3月に高校を卒業した安本悠人さん(京都・洛星高校)と石山蓮也さん(京都・鴨沂高校)の漫才コンビ「レイジークラフト」は、昨年12月に高校生による漫才の大会「ハイスクールマンザイ2022」で優勝した。4月から大学生として新たな道を歩みだした2人に、お笑いと高校生活をどのように両立させていたのかを聞いた。(文・椎木里咲、写真・本人提供)

小学校の同級生コンビ

コンビを結成したのは2019年、中学3年生のときだ。小学生のころから「お笑いをやりたい」と考えていた安本さんが、小学校の同級生だった石山さんに声をかけたことがきっかけ。

安本さん(左)と石山さん

「(石山さんは)小学生のころから人気があって、同級生から好かれているようなやつ。一緒に舞台に立つときに、そういう人がいいなと思いました」(安本さん)

石山さんは、18年のM-1グランプリで霜降り明星が最年少優勝を果たした姿を見て、「自分が最年少記録を塗り替えたい」と考えていた。安本さんから誘われ、コンビ結成を快諾したという。

解散の危機乗り越え「もう1年」

高校進学後も活動を続け、高校2年生のときに出場した「ハイスクールマンザイ2021」では8組が出場する決勝大会に進出。しかし、表彰台に登ることはかなわなかった。大学受験の予定もあり、安本さんも石山さんも「ハイスクールマンザイは高2で最後」と考えていたことから、一時は解散の危機もあった。

その危機を脱したきっかけが、高校2年生が終わるころに石山さんが安本さんにかけた「お前ともう1年続けたい」という言葉だ。

「安本はすごい才能がある。僕と組む、組まん以前に、お笑いから離れるのはもったいない。学校の友達やハイスクールマンザイを見てくれた方が応援してくれたこともあり、『もう1年やらなあかんな』と感じて、安本を引き留めました」(石山さん)

解散の危機を乗り越え、見事優勝を果たした(ハイスクールマンザイ2022提供)

安本さんは「人にそこまで言われたことが初めてだったからうれしかった」と話す。そして「ハイスクールマンザイ2021」の優勝者が、漫才を続けながら大学受験をしたと知ったことも後押しとなり、2人は高校3年生まで活動を続けることを決意した。

歴史上の人物は「友達」に見立てて暗記

高3の12月まで「ハイスクールマンザイ2022」での優勝を目指して練習を重ねた2人だが、大学受験の勉強も並行して行っていた。石山さんは漫才をやっていて「記憶のコツ」がつかめたという。石山さんはネタを覚える際、台本を見ながら、登場する人物の顔や登場する場所を頭でイメージして覚えている。日本史の勉強にこの想像力を応用し、歴史上の人物の性格を想像して覚えていったそうだ。

加えて、日本史の勉強で実践したのは「人物に感情移入して勉強する」方法。「例えば本能寺で織田信長が殺されちゃったときは、『おい、信長!』と、部屋で一人でも声を出します。歴史上の人物を、ほんまの友達のように感情移入すると覚えやすいです」と、勉強を楽しむコツを語る。

日本史暗記のコツは歴史上の人物を「友達」だと思うこと

安本さんは定期テストの際、テストの約3週間前から勉強を開始。1日のうちにさまざまな科目を勉強することで、飽きないよう工夫していたそうだ。

「数学が苦手なので、一日中数学をやるのは耐えられへんと思って。気分転換の意味も含めて、理科や社会を挟んでいました。時間で区切るというより、『ここの単元まで』『ここのページまで』と目標を決めるとやりやすかったです」

漫才の大会と定期テスト期間がかぶってしまった時期もあったが、その際はさらに前もって勉強を開始。大会会場に向かう電車の中で単語帳を見るなど、スキマ時間も活用した。

高校卒業、それぞれの道へ

3月に高校を卒業し、4月からは大学生となった2人。安本さんが東京の大学に進学したため、レイジークラフトとしての活動は一時休止だ。しかし、2人はそれぞれ大学でお笑いを続ける。

将来について、石山さんは「ちっちゃいころから芸人に憧れがあったので、1回挑戦したい」と夢を語る。安本さんは「将来芸人を続けるかまだ迷っているけれど、就職するにしても、テレビ局で『M-1グランプリの裏側』に行けたらいいなと思います」と語った。