興陽高校(岡山)の生徒会は「時代にそぐわない校則」の改革に挑み、今年4月からの校則変更にこぎつけた。どんな校則をおかしいと感じ、どのような内容に変更させたのか。校則変更活動に携わった大下隼ノ介さんと橋本劉己さん(ともに2年)に話を聞いた。(文・椎木里咲、写真・学校提供)
頭髪指導で改革決意「男女で違うのはおかしい」
校則変更活動を行うきっかけになったのは、次期生徒会長に選出された大下さんが入学直後に受けた頭髪指導。耳を完全に覆う「マッシュヘア」をしていた大下さんは「男だから髪を切れ」と指導を受け、短く切ることになった。
当時の頭髪に関する校則は男女別に基準が定められており、男子は耳が出る髪型に、女子は肩より長い場合は結ぶという決まり。さらに男子のツーブロックや刈り上げ、女子のポニーテールやお団子ヘアなどの髪形も「就職の際に企業からの印象が悪くなるから」という理由で禁止されていた。
「男女で頭髪の基準が異なるのはおかしい。校則を変えたい!」と考えた大下さんは、橋本さんとともに1年生の1月から生徒会役員に。他の生徒からも校則変更の希望が出ていたことが後押しとなり、昨年4月から校則改革への道のりが始まった。
髪型の印象を企業にアンケート
校則で禁止されている髪型は、本当に企業から抱かれる印象が悪いのか。企業側の考えを知るため、同校に求人票を送った企業にアンケートを実施し、そのうち139社から回答を得た。校則で禁止されている12種の髪型のイラストを載せ、それぞれの髪形に対してどのような印象を抱くか、男女で髪型や服装の基準が分かれていることをどう感じるか等について意見を聞いた。
さらに昨年8月には企業と生徒会で交流の場を設け、実際に髪型に対する印象をヒアリング。その結果、校則で禁止されている髪形の大半は特に悪い印象を抱かれていなかった。
この結果を踏まえてルールメイキングに詳しい弁護士とも相談を重ね、昨年10月に新しい校則の草案を練り上げた。しかし、一部の企業や先生からは「世の中は性別で区別したほうが分かりやすいこともあるし、肉体の構造上男女で校則を分けることは必要だ」「男子の長髪は清潔感に欠けるので、短髪のほうがよい」という意見も出た。
生徒会は校則で許容できるボーダーラインを探りながら、「みんなが納得する校則」を目指し何度も話し合いを重ねた。
「今校則を変えないと、今後も自分みたいに嫌な思いをする人が出てしまう。性別の固定概念にとらわれない新しい考え方があるんだってことを、否定的な意見を持つ人に熱心に伝えました」(大下さん)
来年度から新しい校則に
生徒会の活動の結果、昨年11月の職員会議で新年度からの校則変更が決定。新しい校則では頭髪基準が男女で統一されたほか、「コンプレックスを隠す」目的であれば、眉毛を整えることや、色付きの日焼け止めを使うことが許可された。
次期生徒副会長に選出された橋本さんは「自分はもともと面倒くさいことをあまりやらないタイプ。でも今回の活動で、『面倒なことでも頑張る大切さ』や、他の人の意見を取り入れる大切さを学びました。話をまとめるスキルが上がったと思うので、面接などに生かしていきたいです」と、校則変更活動を通して身に付いた力を語った。
大下さんは「周りの否定的な意見に流されず、自分自身をしっかり持てたことを誇りに思います」と胸を張る。「周りに流されてしまって自分の意見を言えない人や、個性を主張できない人がいる日本で、『間違っていることは間違っている』とはっきり言える人間になりたいです」と、晴れ晴れとした表情を見せた。