普段なんとなく目にしているCMやアニメ、ドラマ……。私の父は、これら映像コンテンツを作り上げる会社で働いています。仕事内容ややりがいなどをインタビューしてみました。(高校生記者・にゃむ=2年)

映像を加工する技術者集団

―どんな役割を担当しているの?

「ポストプロダクション」でテクニカルプロデューサーをしているよ。ポストプロダクションは、映像制作のなかでも技術的な役割をする会社のこと。映像プロダクションから仕事を請けて、映像加工する会社というのが適切かな。

その中でもテクニカルプロデューサーは、働く技術者、機材などをコンテンツに応じてプロデュースする役割を担っているよ。

―どこで、どのような仕事をしてる?

オフィスでの仕事が多いかな。最近はコロナウイルスの影響もあってリモートでの会議も多かったけど、リアルでの打ち合わせや実際に撮影現場に赴くこともあって、オフィスのほうが効率よく仕事が進むから出社することが多いかな。

編集室。CM等の編集に使っている

そこでエディター、ミキサー、CGプロデューサー、アニメーターなどさまざまな技術者と打ち合わせを重ねて、コンテンツの完成に向けて活動しているよ。プロダクションのプロデューサーやカメラマン、映像ディレクターなどともコミュニケーションを取り、技術者とつなげていく仕事だから、毎日本当にいろいろな人と接しているよ。

コミュニケーションが質向上につながる

―この仕事を選んだきっかけは?

昔から映画やドラマなどの映像コンテンツに興味があって、将来の夢として憧れがあったんだ。学生時代に映像に関連する職業について調べたのがきっかけかな。

―この仕事をする上で必要な技術は?

端的に言うとコミュニケーション能力。自分の会社の技術を売る仕事だけど、その知識は仕事をするうちに覚えていくから大丈夫。例でいえば、技術現場へディレクターやカメラマンの演出意図を的確に伝えるのは非常に大切なことで、必要な情報を聞き出す能力がクオリティーを高くしていくことに直結しているんだ。

実際に使われているスタジオ

―下積み時代のエピソードは?

今の会社に入った時はまずCMを扱う部署に配属され、「15秒や30秒という映像コンテンツを作るのにこれだけの人が、技術が使われているんだ」と日々驚くことばかりだったよ。

中でも初めて先輩社員の同行で、実際の撮影現場に立ち会ったときのことは、今でもよく覚えている。映画の撮影も行うような都内のスタジオで、実際に俳優、美術セット、録音機器、撮影機器を目の当たりにして、「これから同録の撮影が始まるから一切音を出しちゃいけないよ」と言われて、微動だにできないぐらい緊張したよ。本当にあそこから始まったんだなぁなんて、今でもよく思い出すね。

映画館で自分の名前が流れ感動

―この仕事をやっていてよかったと思えた瞬間は?

実際に自分の関わった映画に、初めてエンドクレジットに自分の名前が映し出されるのを映画館で見たときに、「こういう仕事ができて本当によかった」と思えた。これからもさまざまな優良映像コンテンツを制作して、エンターテインメントとして人に感動を届けられるよう関わっていきたいと思ったよ。

―この仕事で一番大変なところは?

仕事の中でも「スケジュール管理」が一番大変かな。短いスパンで動く案件、長いスパンで動く案件とさまざまなんだけど、これを同時にいくつも管理する。さらに人やスタジオのブッキングも含めた管理になるので日々いろんな事が起きるんだ。だから日々進捗(しんちょく)確認なんかもするんだけど、機械のトラブルやスタッフの病気などでうまくいかないときとかのリカバリーは本当に大変。

ナレーションブース。MAブース内にあり、声優さんなどが実際に収録する場所

ある仕事でスタッフが急な高熱で出社できない、でもその日はクライアントもスタジオに来て試写という重要な日。朝から奔走して代替のスタッフを調整したり、先方にも相談したり大変だった。でも同じ会社の周りの人たちが助けてくれて、本当に心強かったね。

映像の進歩・変化とともに自分も成長

―この仕事で一番魅力に感じる部分は?

映像というデジタルコンテンツは日々進歩している。だから僕たちもいろんな技術や知識の習得をしているんだけど、これが新鮮で魅力的なんだ。テレビにしても最近でいえばアナログ放送からデジタル放送へ変わったし、最近ではスマートフォンやタブレットでいつでもどこでも好きな映像コンテンツを視聴者が見られる、いわゆる配信形態が主流になってきている。

それに伴って映像表現もどんどん変化していっている。こういう変化に対応していくことで自分自身も成長していることを実感できるのは、この仕事を続けていくモチベーションにもつながっているかな。

―この仕事、業界は将来どんな風に変化していくと思う?

最近ではドローンなどでの撮影は一般的にも行われるようになって、視聴者が見たこともないような映像表現をできるようになっている。視聴するものも、スマートフォンやタブレットは当たり前で、スマートグラスやメタバース空間など、その進歩は限りなく続いている。

撮影現場でも演者をスタジオに呼び、背景を高精細なLEDパネルで展開することであたかも「狙いのロケーション」で撮影しているようなバーチャルスタジオなども用いられるようになっているよ。

僕らが作っているものはあくまでデジタルの映像媒体。AIとかで映像加工を簡単に行える技術もどんどん進んでいるけれど、「人の手が作り出すものとは一線を画すもの」だと思っている。だから僕ら技術者は日々学ぶことを止めないんだ。これからも目まぐるしく変化していく仕事だと思っているけど、そこもまた面白いものだと思っているよ。

―この仕事、業界を目指す高校生がやっておいたほうがいいことは?

映像表現を学べて、実際にPCベースで行えるソフトもどんどん出てきているから、そういうもので自分が表現したい映像を作ってみるのもいいかもしれないね。

あとはいろんなジャンルの映像に興味を持って見ることかな。実際の制作工程なんかも見られたりするものもあるから、そういうものも見てみるのもいいと思うよ。

【取材後記】父のようなやりがいある職業を見つけたい

改めて父の仕事を取材して、私は父の仕事を全然知らなかったんだな、と思いました。毎日夜遅くまでパソコンで作業しているのも、日曜でも忙しそうに電話しているのも全て、私たちが普段何気なく目にしている映像コンテンツがより良いものになることにつながっているんだな、と思いました。高校生の私も「父のようにやりがいの感じられる職業に就きたいな」と思いました!