大きな飛行機を操縦するパイロット。憧れの職業として人気が高いですが、どんな魅力と努力が詰まっているのでしょうか。パイロットの父に詳しくインタビューしました。(高校生記者・なぎさ=3月卒業)

飛行中はずっと気が抜けない

―パイロットはどんな仕事なの?

想像通り、飛行機の操縦をするよ。ただ、目的地までお客さまだけをお送りするのではなくて、荷物も運んでいるんだ。犬や猫などの動物も運んだことがあるよ。

パイロットが操縦する飛行機

操縦席には、機長と副操縦士がいて、機長が全責任を持って飛行機を運航しているんだ。離陸、着陸以外は自動操縦を活用する。でも、ずっと自動にしているわけではなくて、雲があったら避けたり、高度をその都度変えたりするのはパイロットの仕事だよ。

―じゃあ飛行中はずっと気が抜けないんだね。

そうだね。だから、11時間以上の長いフライトではパイロットが3人乗っているよ。1人が休んで2人がコクピットで操縦する。交代で休みながら目的地まで飛行するんだ。

法律上、横になって休めるところがなければいけないと決められているからね。

―どんな人たちとどこで仕事をしているの?

場所は空港だね。整備さんや、管制塔で指示をくれる人、キャビンアテンダントの人たちと仕事をしているよ。

あとは、飛行機の経路や燃料を計画する人たちや飛行機のバランスを計算する人がいる。お客さまの人数によって座る場所を計画したり、貨物の重量によって貨物の積み込みの場所を変えたりして、重量とバランスの管理をする人たちだよ。他にも荷物を積み込んだりする人がいて飛び立てるんだ。

離陸、着陸時にパイロットに指令を出す管制塔

早朝、夜通し…時間は不規則

―仕事をする時間は不規則なの?

時間はとても不規則だよ。朝早い時も、夜通しで仕事をする時もある。長距離の飛行となると、18時間仕事をすることもあるよ。

―1日の流れを教えて。

会社に行ったらまず、飛行計画を確認するよ。その後、飛行機の外部点検を機長か副操縦士が確認して、キャビンアテンダントと打ち合わせをする。打ち合わせでは、機内の安全やお客さまへのサービス、揺れの情報、天候の確認をするよ。操縦席に座ったら、管制官とやりとりをしながら目的地まで飛行するんだ。

―パイロットを目指そうと思ったきっかけはなんだったの?

小学生の時の作文に「パイロットになりたい」と書いていたけど、ずっと熱中していたわけではないんだ。親の仕事を継ぐ予定だったけど、就職活動の時に、せっかくなら受けてみようと思って、受けてみたら受かったんだ。その時の合格率は、2%だったよ。

臨機応変に対応できる力が大事

―パイロットになる上でどんな技術が必要?

もちろん飛行機を飛ばす技術は必要だね。でも、それだけじゃなくて、チームとして「周りの人に力を発揮してもらうこと」が必要だと思う。

昔の機長は、飛ばすことに重きが置かれてたけど、今は、ミスや危機をチームでカバーして乗り越えることが大事。臨機応変に対応できる力が大切だね。

空港内にある電光掲示板

―飛行機を飛ばす技術はどうやって身につけるの?

副操縦士になるのに約3年、知識の習得と訓練の期間があるよ。副操縦士になってからまた10年前後の経験を積んで、機長になる訓練を受けられる。訓練は1年前後あって、その後、試験に合格して機長になる。機長になってからも年に3回、訓練と試験を受けるんだ。技術の維持向上のためだよ。

―長い期間がかかるから、下積み時代は大変そうだね。印象に残っているエピソードはある?

国家試験に落ちた時に、落ち込んでいたところを同期に励ましてもらったことがすごく印象に残っているよ。だからこそ、アメリカで行った訓練で、初めて教官がいないソロフライトをした時の気持ちよさは忘れられないな。

体調管理も仕事の一つ

―どんな時にやりがいを感じる?

やっぱり無事にフライトが終わった時。特に、天気が悪かった時や、トラブルがあって緊急着陸をした時、チームで困難を乗り越えられた時にとてもやりがいを感じるよ。

―パイロットの厳しさや大変なところは?

1つは毎年試験があること。年に3回あって、2回は身体検査をするよ。健康な体かどうか検査をする。体調面だと、国際線の時差による体調の管理も大変だよ。

もう1つは、天候に左右されること。悪天候の時は大変だよ。例えば、風が強かったり、視界が悪くてギリギリの着陸になる時。地上交通と違って飛行機は止まったら落ちてしまうからね。

―パイロットに向いているのはどんな人だと思う?

何か特別なものを持っている人ではなく、普通の人。全てにおいてバランスの取れた人。強いて言うなら、周りがよく見えることと、何があっても動じない心を持っている人かな。冷静さが大事だと思うよ。後は、機長になるまで長い期間がかかるから、情熱も大事かな。

―パイロットの魅力は?

なんと言っても、大空を自分の手で飛べること!

自分の手で空を飛んでいることは、とても楽しいし、今でも目的地に着いたときは達成感を感じるよ。コクピットから見える景色も最高にきれい。開放感も感じるよ。あとは、国内も海外もいろいろなところに行けること。各地のおいしいものを味わえるよ。

良いことも悪いことも見られる力を

―この仕事は将来どんな風に変わっていくと思う?

自動操縦の技術が上がってきているけど、結局最後は、パイロットが必要だと思う。地上と違って、空で非常事態が起きてもすぐに駆けつけて助けられないからね。

あとは、飛行機の速度が速くなることによって、目的地まで早くたどり着くようになるかもしれないね。

―この仕事を目指す高校生が今やっておいた方がいいことはある?

英語力は必要だね。あとは、どんな仕事にも共通することかもしれないけど、いろいろな経験を積むこと。それで、物事を多角的な視点から見る力を養うこと。いいことも悪いことも見られるようになるのが大切だね。

どんな人でもなれるチャンスはあるから、高校生のうちから「パイロット一本!」って決めないでいろいろなことを経験してほしい。

【取材後記】改めて憧れの気持ちが強くなった

父の影響で昔から飛行機が好きで、今回のインタビューでより一層パイロットの魅力に触れられました。

インタビュー後、改めて大好きな空港に行ってみました。飛行機が飛んでいく姿はやはりカッコよくて、憧れの気持ちを強く感じました。しかし、その裏には高度な技術を習得するための長い期間の努力が詰まっていました。その努力があるからこそ、憧れの職業として人気が高いのかなと思いました。

新型コロナウイルスの影響で、気軽に飛行機に乗って旅行はできなくなってしまいましたが、世界中を自由に旅できるようになる日を心待ちにしたいと思います。