「どうすれば弁護士になれるの?」「弁護士の仕事内容は?」。こうした疑問を解消すべく、日本弁護士連合会は、高校生・大学生向けのイベントを開催した。今回は若手弁護士の座談会の模様を伝える。(文・高槻官汰、写真提供・日本弁護士連合会)

弁護士は、基本的人権を守り、社会正義を実現することを使命としている。裁判や法律相談、海外での法律整備支援など、活躍の場は多岐にわたる。弁護士を目指したきっかけなどを、若手弁護士3人が語り合った。

一生学び続ける仕事

西野優花弁護士 私たち3名は、個人のお客さまや中小企業を相手に仕事をすることが多いですね。いろいろな仕事がある中で、特色あるものを教えてください。

西野優花弁護士

紙尾浩道弁護士 私はスポーツ団体・選手への支援活動を行っています。 

紙尾浩道弁護士

三宅千晶弁護士 私は行政事件を取り扱うことが多いです。例えば厚木基地訴訟や、持続化給付金訴訟に弁護団として関わっています。

三宅千晶弁護士

西野 私は児童相談所関連の業務で、家出してきた子どもを支援しています。学校訪問も行い、中高生に向けていじめ予防の授業をしています。

次に、弁護士を目指したきっかけについてお話しします。私は高校生の頃、ニュースで法科大学院の創設を知りました。知り合いが裁判をすることも影響して、弁護士を目指そうと思いました。

紙尾 法科大学院で出会った実務家の先生方の魅力に引かれ、弁護士になる意欲が高まったのがきっかけです。

三宅 将来の進路に悩んでいた時期に、沖縄で弁護士をしている父の話を聞いたのがきっかけです。「弁護士は一生学び続ける仕事である」という言葉が印象に残っています。一生学び続ける仕事を引き継いで、米軍基地問題を解決したいと思い、弁護士を志しました。

院では朝から晩まで試験勉強

西野 ここで、弁護士になるまでの一般的な流れを説明しましょう。まず、法学部・法科大学院(ロースクール)を経て司法試験合格を目指します。合格後は「司法修習」と呼ばれる研修を修了して弁護士になります。

法学部では、学問としての法律に初めて触れ、時事問題も学びます。三宅先生に、法学部時代で印象に残っていることをお聞きしたいです。

三宅 高校生の頃から、性や自己決定権について問題意識を持っていました。そのため、大学では憲法のゼミに入って、自己決定権について深く考える機会を持ちました。

「現場主義」を掲げているゼミだったので、研究・調査の際は、まず当事者に話を聞きに行くなどしました。高校時代の問題意識を、法学部で学問的に追究できたことが印象に残っています。

西野 法科大学院では、朝から晩まで司法試験合格に向けて勉強しますので、人間関係が濃くなります。弁護士になって、自分の専門外の事件を扱うときは、法科大学院時代にできた友達を頼ることがあります。

三宅 法科大学院卒業後は、沖縄県で米軍基地反対運動の見守りを行っていた父と共に、現場に赴きました。現場には警察・機動隊が派遣され、長時間にわたる交通規制も行われました。今では違法と認められていますが、父が運転していた車は警察に写真撮影されました。

違法な事には然(しか)るべき判断を下し、権力の行き過ぎを止めること、侵害された国民の権利を回復することが、弁護士に求められていると強く感じました。

仕事の魅力を語り合う、若手弁護士たち

自分のペースで仕事ができる

西野 次に、弁護士という職業の魅力についてお話しします。私は、キャリア設計の自由度の高さに魅力を感じます。育児休暇の取得も柔軟にできるため、自分のペースで仕事ができます。会社や自治体から弁護士の求人が出されることも多く、多様な働き方が選べます。

紙尾 会社の社長や芸能人・スポーツ選手と対等に話し合えるのも魅力的ですよね。

三宅 私は西野先生と同じく、自由度の高さが魅力だと感じます。上司から指示されることなく、自分の裁量で仕事に取り組めます。また、司法を通じて社会を変えられることも魅力ですね。

新成人に法律を知ってほしい

西野 最後に、今後の目標を教えてください。

紙尾 私はスポーツに興味・関心がありますので、今後はテニスのプロリーグ創設を支えるなどして、スポーツ選手・団体の支援を行っていきたいと思います。

三宅 今後の目標は大きく3つあります。第一に、尋問や弁論など、法廷で求められる技術を向上させることです。第二に、勝訴すべき行政事件には確実に勝訴することです。第三に、eスポーツ選手の支援をする際は、選手会などを作って選手の声を吸い上げていきたいです。

西野 今年の4月から改正民法が施行され、成人年齢が18歳に引き下げられました。今後は、新成人を迎えた人に法律のことを知ってもらう機会を作りたいです。