体は女性だけど、心の性別はその時によって変わるという雨さん(3月高校卒業)。自身の一人称に「俺」や「僕」を使っていましたが、仲の良い友人に否定されたことに大きなショックを受けたといいます。

気分や場面で心の性別が変わる

自分は体は女、心は男でも女でもある人間です。その時の気分や場面によって、心の性別は変化します。例えば、友人(女性)と洋服を買いに行く時は女、家族と一緒にいる時や1人でいる時、学校にいる時は男……などです。

友人に連れられて化粧品を買いに行き、化粧を教わったが、その日以来使っていない

以前、一人称は「俺」、ネットでは「僕」を使っていました。成長するにつれて「私」という一人称に違和感を持ち、少し模索した結果、「俺」や「僕」が一番自分に合っていると思ったのです。高校ではずっとこの一人称でした。

服も女物は少なく、いつもメンズの服を着て、スカートなども中学校の頃からはいていませんでした。化粧なども一切してきませんでした。

「俺じゃなく私にしたら?」友人の言葉にショック

そんな自分がいつも通り、友人(女性)と話していた時のことです。進路も決まり、「どんな服が似合うと思う?」と話していると、いつも一緒にいる友人が一言、言いました。「まず一人称を変えたらいいんじゃない?」と。

その友人はとてもかわいくて、女の子らしい服をたくさん持っており、化粧もしっかりするような子でした。男の子からも女の子からも人気で、よくいろんな人と話していました。自分にもとても優しく、信頼していた友人の一人でした。

そんな彼女がその一言を放ったとき、最初は何を言っているのかわかりませんでした。彼女は続けて言いました。

「もう高校生なんだから一人称を俺じゃなく私にしたら?」。自分が「私」という一人称に抵抗があることを伝えると、彼女は「でも俺はダメ」「僕もダメ」「俺という一人称が許されるのは中学生まで」「私も最初は〇〇(彼女の名前)という一人称を使っていたけど、私に直した」と立て続けに言ってきたのです。

どの一人称を使うかは個性だ

自分はその時、とてつもなくショックを受け、その後の授業は全く集中できず、家に帰ってから自分の部屋で声を殺して大泣きしました。自分の価値や生きている意味もわからなくなり、目の前が真っ暗になりました。死んだほうがマシだとも思いました。その一件以来、そのことがトラウマになってしまい「俺」や「僕」ではなく「自分」や、別の一人称を使うようになりました。

しかし、新しい発見もありました。自分と同じような悩みを持っている人が大勢いること、またLGBT+Qのことについて、さらに知ることができました。自分についてもより深く知ることができたのです。

また、共通の趣味を持つ別の友人(女性)がネットやゲーム内で「僕」を使っていたり、5年ほどつながっているネッ友(女性)が「男みたいになりたい」と相談してくれたりしました。「意外と近くにも同じような悩みを持つ人がいるのかもしれない」と思いつつ、これは一人一人の個性であり、他人に侵されるものではないと感じました。

SNSで理解できる仲間と交流

しばらくは「自分」という一人称を使っていたのですが、最近になってSNS上限定で、また「僕」という一人称を使い始めました。

ツイフィールという機能を利用して、今度はちゃんと「私という一人称を使うことに違和感を持っているので、僕という一人称を使っています」と記載しました。周りの相互さん(お互いフォローし合ってる人)も理解して、みんなと同じように接してくれています。

相互さんの中にも、女の子で「僕」という一人称を使っている人がいたり、相談サイトで同じ悩みを抱えていると言ってくれた子がいたりして、改めて意外と近くにいるのかもしれない、1人じゃないと感じました。

否定せずに受け入れてくれたら

心の傷が癒えたわけではありません。最終的に自分の中では「そういう考えの人もいるんだな」という考えに至りましたが、それでもいまだに、あの時の記憶がフラッシュバックして悩むことも多いです。

今は「僕」という一人称はSNS上で使い、それ以外では「自分」や他の一人称、場合によっては違和感のある「私」を使っています。

友人との一件の後、今後の進路で私服になることなどを考えて少し女の子っぽい服を買った

「LGBT+Q」のことは少しずつ世の中に知られてきていますが、学校で習うことはほんの一部であまり知られていないことが多い印象です。

もしこの文を読んでいる方で、少し性別や性的指向に違和感を覚えている方がいらっしゃれば、ぜひ自分の個性を調べてみてくださいね! そうでない方も「こういう人がいるんだな」と理解だけでもしてほしいです。そしてもし、友人や家族にジェンダーのことを相談されたら、できれば否定せずに、受け入れてあげてください。この先、自分のように傷つく人が減りますように……。(雨・3月卒業)

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