みなさんは「特許」という言葉をご存じでしょうか。特許とは発明した製品の権利を保護するための制度です。私の父は、特許に関わる専門的な業務を行う弁理士です。どのような仕事をしているのかインタビューしました。(高校生記者・ひょんこ=2年)

技術者の発明を守るお手伝い

―弁理士はどんな仕事?

顧客の技術者が考えた発明を、知的財産部の担当者と打ち合わせをして「出願書類」を作成。特許庁に提出するのが、大きな仕事の一つだよ。

ひょんこさんとお父さん

審査請求をした特許出願について、特許庁の審査官から「拒絶理由通知」(特許の要件を満たしていないと判断された際に通知される書類)が発行される場合もあるんだ。

その拒絶理由を解消するために、顧客の発明者と知的財産部の担当者と改めて打ち合わせをして、意見書と手続補正書を作成し特許庁に提出する。そして「特許査定」(特許権を得られると判断された場合に通知されるもの)をもらうことも、もう一つの大きな仕事だよ。

ちなみに顧客は、日本と外国どちらにもいるんだけど、うちの場合は外国の顧客の方が多いかな。

難関資格を仕事しながら取得

―どこで仕事をしているの?

コロナ禍の前は事務所で仕事をしていたけど、今は仕事の状況に応じて、自宅と事務所で仕事をしているよ。

―勤務時間は?

うちの場合は完全フレックス制で、好きな時間に仕事ができるよ。僕は、大体9時から17時の間が多いかな。

パソコンは2台使用し効率よく仕事をする

―なぜこの仕事を目指したの?

元々は技術者で、発明を考える方だったんだけど、仕事をしていく中で、特許出願の仕事に関わりたくなったんだ。

―どうやって弁理士になったの?

弁理士になるには弁理士試験に合格しなければならないので、何年かスクールに通って勉強したよ。

弁理士試験は「短答式筆記試験」「論文式筆記試験」「口述試験」の3つに分かれていて、全てに合格する必要があるんだ。2020年度は3401人(受験者2947人)が志願して合格者は287人、合格率は9.7パーセントだったよ。

僕は仕事をしながら勉強をしていたから、勉強時間を確保するのが大変で、平日の夜と土日はずっと勉強していたよ。

訴訟で勝訴、顧客を救った

―仕事でやりがいを感じた時のことを教えて。

顧客の特許権を守るため、顧客の特許製品をまねして作り売っている他の会社に、「特許権侵害訴訟」を起こしたことがあったよ。訴訟に勝って相手企業の製品の製造販売をやめさせることができたときはうれしかったね。

―大変なのはどんなところ?

発明というのは新しい技術分野で考え出されることが多いので、自分も常に最先端の技術を学び続けなければいけないところかな。

仕事に使う本

―どんな人が向いていると思う?

物事を突き詰めて、理論的に考えられる人が向いていると思うな。

―この仕事の魅力は何だと思う?

特許を通して産業の発達に貢献できるところかな。

―弁理士を目指す高校生がいまやっておくべきことは?

高校時代の数学・物理・化学の勉強は、特許出願のための明細書を作るのに役立つよ。海外のお客さまとのやりとりは英語が必須だから、英語の勉強も大切だね。

【取材後記】誰かの役に立てるようになりたい

私は今まで父親がどんな仕事をしているのかよく知りませんでした。勤務時間や勤務形態が自由な仕事だというのはなんとなく感じていましたが、それは今まで父がたくさん努力をしてきたからこそなのだと分かりました。

依頼された内容に応じて、建築の勉強をしたり化学の勉強をしたりと、ずっと勉強をしなければならない仕事ですが、学ぶことが好きで物事をじっくり考える父親に向いているのだなあと思いました。私も何か興味を持てる専門的な分野を見つけて、人の役に立てる人間になりたいです。