人気の職業として挙がることが多い「医者」の仕事。実際どのように働いているのか、知っていますか? 脳神経外科クリニックを経営している私の父に、仕事内容ややりがいなどを取材してみました。(高校生記者・はちみつ=3月卒業)

学会、研究会、学校…診療時間以外にも仕事

―仕事内容を教えて。

患者さんの診察をして、頭痛・めまい・物忘れなどの症状をみたり、MRIやCTをとって脳だけでなく他の臓器にも異常がないか調べてたりしているよ。

CT検査の装置

地域に密着して、しっかり検査できるようにしているよ。何か問題が見つかった場合には、大学病院など大きな病院に紹介する体制をとっているんだ。

―どこでどんな人たちと仕事しているの?

毎日クリニックで「看護師」「レントゲンやMRI、CTをとる放射線技師」「心電図をとったり、エコーの検査をしたりする臨床検査技師」「受付」などの人たちと働いているよ。

―1日の流れを教えて。

平日は9時~13時と、14時~18時、土曜日は9時~13時に診察している。けれど、研究会や学会に参加したり、企業の健康管理をする産業医や学校医にもなったりしているので、診察時間以外にも働いているよ。あと、最近は地域のコロナワクチン集団接種の場にも、足を運ぶことがあったかな。

MRI検査の装置

ブラックジャックに憧れて

―どうして今の仕事を目指すようになったの?

高校2年の時に「人のために何かできる職につきたい」と思って、「医者になりたい」と考えるようになったかな。小さい頃から「ブラックジャック」に憧れてたんだよね。

―なんで開業しようと思ったの?

大きな病院で手術や診察をする「勤務医」だった頃は、病気になった人を手術や薬で治療していたんだ。治る人がいる一方で、治らない人ももちろんいて……。

「病気が進行して深刻になる前に、病気を見つけ出して治癒率を上げたい」「地域に密着した治療を行いたい」と思うようになったんだ。

―開業医になってから気をつけていることは?

勤務医の頃は、同じ科や他の科の医師と合同で会議して、研究論文を読んで最新の情報やいろいろな知識を取り入れていたんだ。けれど今は、クリニックに医師1人しかいないから、研究会や講習会、学会に参加して、知識の維持に努めてるよ。

死と向き合う瞬間がある

―医者になるまでの仕組みを教えて。

当時は6年間大学で授業を受けて、国家試験を受ける。試験に通ったら研修医になって、「〇〇大学の〇〇科の医局に入る」と決める仕組みになっていたよ。脳神経外科に行く前に、まず外科に行って、脳神経外科に戻り、その後神経内科に行って内科の勉強をした。

今は、最初から〇〇科に入るのではなくなったね。研修医は、2年間は科を決めずにいろいろな科を回って、終わった後に自分の専門の科を決めていく、という形になっているよ。

―研修医のときの印象に残っていることは?

初めて主治医になった時に、立ち会わなければならなかった患者さんの死かな。医者になる以上、死とは向き合わなきゃいけないことがあるからね。

―やりがいを感じる瞬間は?

やっぱり患者さんの病気が治ったときだね。

診察室。地域に根ざした治療を続けたい

治療のやりがいはとても大きい

―仕事の厳しさ、大変なところは?

患者さんが後遺症を患ってしまうと、患者さんだけでなく、その家族のあり方が変わっていくんだ。だから家族にも関わっていく必要があるよ。

―向いているのはどんな力がある人?

これまでのお話からも感じ取ってもらえていると思うけれど、「勉強ができる」「器用」だけでなく、全てにおいてバランスが良い人かな。手術になると、「先を考えることができる人」がうまいからね。

―この仕事の魅力は何だと思う?

心も体も健康でいることは、人が生きていく上で大事だし、多くの人が望むことだと思う。治療できるっていうやりがいは、とても大きいよ。

―医者を目指す高校生が今やっておいたほうがよいことは?

勉強はもちろん、いろいろな人と関わりを持っておくことが大切だと思うよ。

【取材後記】医者に必要なのは学力だけじゃない

父がどう仕事と向き合っているのか、詳しく知れました。医者になるためには、学力だけなく他にも大切なことがあると感じさせられました。

最近は、新型コロナウイルスの流行で大きな病院は特に大変です。個人クリニックをしている父も、ワクチンを打って、診療時間外に集団接種会場に行っています。

医療関係者が大変な思いをしていることを毎日実感させられていますが、高齢化が進む今の時代、医者の役割はとても大きいのではないかと思いました。