国公立大学一般選抜の最初の関門である大学入学共通テストの出願者数は前年度とほぼ横ばいでした。一方、秋の摸試の結果では、国公立大志望者は難関大を含めて増えていると言います。駿台教育研究所進学情報事業部長の石原賢一さんに、国公立大の一般選抜の動向を聞きました。(黒澤真紀)

国公立大志望者は増加、「地元志向」が続く見通し

22年度大学入学共通テストの出願者数は53万367人と、21年度より0.9%減少。背景には18歳人口の減少があります。一方で、現役生の45.1%が出願し、センター試験時代を含めても過去最高の割合となりました。

21年秋の摸試(第3回駿台・ベネッセ共通テスト模試)のデータをみると、国公立大学志望者は、前年度に比べ10%増加しています。「1年前はちょうどコロナ第3波の真っただ中。その影響で国公立大志望者数が前年度より12%減少しました。今回はそれよりも状況が落ち着いていたので、反動で志望者が増えたのでしょう」(石原さん)

21年度入試では、コロナ禍の長距離移動を敬遠する受験生が多く、都市部から地方への志望者は減少しました。その一方で、地方の受験生の地元国公立大志向が高まりました。都市部のコロナの感染状況が気になり、また都市部の大学に多かったオンライン授業を避けようとする受験生が多かったためです。この傾向は22年度入試も続くとみられています。

今の大学受験生の志望の傾向を、石原さんは「3C入試」と表現します。

「3Cとは、コンパクト(Compact=長距離移動は不安、出願校数を絞る)、保守的(Conservative=大きな入試改革は嫌われる)、利便性(Convenience=受験機会を増やしたり受験料を減らしたりする大学が人気)。地元大学を受験する傾向は、まさにコンパクト(Compact)な傾向だと言えます。一方で、「3C入試」の影響で、地方から首都圏の大学を受ける受験生が減ることは、首都圏の受験生にはプラスに働くでしょう」(石原さん)

就職に強い学部に人気が集まる

秋の模試で前年より志望者が増加した学部系統は、社会、生活科学、芸術、薬学部。背景の一つが地方の経済状況です。

社会系には、社会福祉系が含まれます。「地方でいい就職をしようと思ったら、保健衛生系か社会福祉系が有利です」(石原さん)。具体的には、岩手大や静岡大、山口県立大といった地方大学の社会福祉系が人気といいます。

芸術系は、映像クリエイターになりたい人が増えているためです。景気に左右されない公務員志向の高まりで、法学系の志望者も増加しています。

医・歯・薬の各系統は昨年に引き続き人気です。特に国公立大学の薬学部は、治療薬やワクチンの開発を目指し、研究職へ進みたいと考える人が多く、増加傾向です。国公立大の医学部志望者数は、2020年度入試から浪人よりも現役の方が増加し、現役中心の争いとなっています。

国公立大の理系はどの学部も全体平均と同じくらいの増加です。

外国語、国際関係は、コロナ禍の前年に大きく減らし、今回の増加も小幅です。

人気は一橋大、東工大、大阪大 新設の大阪公立大は急上昇

秋の摸試では、難関国立大への「強気」な志望を考えている受験生が前年度より増えました。最難関の東大、京大よりも、一橋大、東工大、大阪大などに人気が集まっています。

関西では、2022年に新設される大阪公立大の人気が急上昇。「9月の模試ではそれほどでもありませんでしたが、11月になって増えてきました」(石原さん)。

昨年、前後期ともに志願者が減少したお茶の水女子大と、国内の女子大で初めて工学部ができる奈良女子大は増加傾向にあります。

「第3回駿台・ベネッセ共通テスト摸試の国立大学の志望動向の抜粋」(駿台教育研究所提供)

競争倍率は例年並み、第一志望に挑戦を

模試での国公立大志望者数は増えていますが、「競争率の面ではこれまで通りと考えて構いません。ぜひ、第一志望へ挑戦を」と石原さん。

2022年度入試でも、コロナ禍への特例措置として、共通テスト本試験の2週間後に追試験が行われるほか、国公立大学個別試験でも追試験などコロナ感染者のための措置もあるので、不安にならずに受験に臨めるでしょう。

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