2度目の実施となる2022年度大学入学共通テストが1月15・16日に行われ、大学受験シーズンが本格化します。昨年は、コロナ禍と大学入試改革が重なり、志願動向にも大きな影響がありました。2022年度の一般選抜(一般入試)はどのような傾向になるでしょうか。私立大学受験の動向について、駿台教育研究所進学情報事業部長の石原賢一さんに聞きました。(黒澤真紀)

私立大「中堅以下は非常に入りやすく」

21年秋の摸試(第3回駿台・ベネッセ共通テスト模試)のデータをみると、私立大の志望者数は、前年度がコロナ下での実施で10%減少した反動もあって18%増加しています。その理由の一つは大学入学共通テストにあります。「共通テスト利用方式」の志望者が29%も増えたのです。

石原さんによると、初めての共通テスト実施となった21年度入試は、事前に行われた試行調査(プレテスト)の問題が難しかったことから、特に私立大文系の受験生が共通テストを利用した入試を敬遠しました。しかし、事前の予想に反して共通テストの平均点は前年のセンター試験を上回りました。「そのため、今年の受験生は、『これならいける』と思い、共通テスト利用方式の志望者が増えたのでしょう」(石原さん)

ただし、共通テストの志望者が増えたといっても過剰に心配することはありません。「私立大は非常に入りやすくなっています」と石原さんは言います。難易度が高い大学から順にA~Eに区分して実質倍率(合格者数÷受験者数)をみると、「21年度入試のEグループは文系で1.6倍、理系は1.5倍まで下がっています。中堅以下の大学は非常に入りやすくなったと言えます。一方、Aグループの文系は、18年度が5.7倍だったのに対して、21年度は3.5倍まで下がりましたが、医学系が多いAグループの理系は21年度も4.1倍と高い水準を保っています」(石原さん)

「2018~2021年度私立大学(文系)一般選抜の実質倍率」(駿台教育研究所作成)
「2018~2021年度私立大学(理系)一般選抜の実質倍率」(駿台教育研究所作成)

学部選びは就職重視 法学部・理系が薬剤師志望者は減少

学問分野別の志望動向をみると、経済状況から公務員志望が増えているため、法学部志望が増加。理系は引き続き人気が高く、特に医療系(医歯薬)に集まっています。

「医学部は私立大全体ほど戻っていません。学費が高いためです。薬学部は難関大学の志望者が増加傾向です。薬剤師になっても就職が厳しいので、中堅以下の大学の志望者は減少しているのです」(石原さん)

コロナの影響で「地元でいい就職をしたい」という地方の学生が多く、保健衛生と社会福祉が人気です。

「社会系の増加は、社会福祉学部の人気によるもの。地方で就職に有利なのはこの2つの学部です」(石原さん)

外国語と国際関係は、学費は高いのに留学できないことがデメリットとなり、海外渡航が自由にできるようになるまで減少傾向が続きそうです。

関東では早稲田、青学、関西では立命館、近大が注目

昨年は、早稲田大と青山学院大で志望者が大幅に減りました。大学入学共通テストと、新たな出題方式の大学個別試験を組み合わせたため、どんな入試なのかわからず、避けた受験生が多かったからです。今年は、出題内容がわかったことから、昨年より志願者が増えると石原さんはみています。

「中央大は2023年の茗荷谷キャンパスへの移転が影響し、法学部の志望者が増加しています。神奈川大横浜キャンパスに新設される建築学部、青山学院大が新設するヒューマンライツ学科も志望者が集まりそうです」(石原さん)

関西では、去年、かなり志望者数を減らした立命館大が増加傾向です。近畿大は、情報学部が新設され、著名な教員も加わることから注目されています。

「第3回駿台・ベネッセ共通テスト摸試の私立大学の志望動向の抜粋」(駿台教育研究所提供)

難関大へ果敢なチャレンジを

2021年度は、46.4%の私立大が定員割れとなりました。「特に中堅以下の大学は模試の結果と前年の結果を比較して出願すれば合格は固いでしょう。『ちょっと届かないかも』と思っている難関大学に合格するチャンスも十分あります」(石原さん)

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