「弁護士」と聞いて、あなたは何を思い浮かべますか? テレビドラマなどでは見たことがあるけれど、実際にはどんなふうに仕事をしているのか知らない人も多いのではないでしょうか。私の父は弁護士です。どんな仕事をしているのかインタビューしました。(高校生記者・みたらしだんご=1年)

人同士のトラブルを解決するプロ

―具体的な仕事内容を教えて。

弁護士が扱う事件には刑事事件と民事事件があるんだ。刑事事件は主に犯罪、民事事件は一般市民同士のトラブルについて扱うよ。

仕事をしているところ

私の場合は民事事件を多めに扱っているよ。事件解決のためのアドバイスをしたり、アドバイスだけでは解決しない場合には、相談者の代理人となってトラブルの相手の人と話し合ったり、裁判所に行って裁判や調停をするんだ。

―どこで、どんな職種の人と仕事をしているの?

法律相談や事務業務は事務所で、裁判や調停は裁判所で行うよ。

一緒に働いているのは主に弁護士、事務員さん、裁判所の関係者かな。場合によっては税理士、司法書士、会計士など専門職の方に協力していただくこともあるんだ。

―1日の流れを教えて。

9:00 出勤

9:30 (昨晩から今朝までの)メールのチェックと返信

10:00 東京地方裁判所で裁判

11:00 (依頼者や相手方の)電話応対

13:00 裁判所で調停

16:00 法律相談

17:00 書面作成

18:00 依頼者と打ち合わせ

19:00 書面作成

21:00 帰宅

勤務時間は毎日あまり変わらないんだけど、上記は1例で、毎日違う予定が入っているので、スケジュールは不規則になっているよ。

気持ちに寄り添う共感力が必須

―弁護士を目指した時期と目指そうと思ったきっかけは?

大学生のときに目指したよ。困っている人を助けることができるし、当時一番難しい試験と言われていたので、挑戦してみたいと思ったから。

―弁護士の仕事をする上で必要な技術は?

相手方の弁護士さんからの書面などを見て、どのように事件を解決すべきか読み取らなくてはならないので、読解力が必要だね。

それから、文書をたくさん作成しなくてはいけないから文書作成力も必要だし、裁判所で人の前で分かりやすく説明するための説明力や、法律相談などで相手が何に困っているのか、事実を聞き出すための質問力も欠かせない。

このような本を使い、調べながら仕事をする

なにより、さまざまな方が依頼にいらっしゃるから、たくさんの人の気持ちに寄り添わなくてはいけないという面では、共感力も必須だ。

事件の解決がやりがい

―その技術はどこで身につけたの? 学校?

いいや。学校ではないなあ。ほとんどは弁護士になって実際に経験をしているうちに自然と身についたかな。

でも、今思い返してみると、弁護士になると決めたとき、法律の本をたくさん読んだことが良かったかもしれない。文の読解力や考え方の基礎が身についたような気がするんだ。

それから、司法試験が論述問題ばかりだったから、試験の勉強をしているうちに、書類などを作る力が身についたのではないかな。

―仕事でやりがいを感じる瞬間は? 具体的なエピソードも教えて。

それはやっぱり、事件がうまく解決して人に喜ばれたときかな。

以前、きょうだいが多く遺産の分割でもめ、険悪な雰囲気になっていた方から依頼をいただいたんだ。しかし、私が間に入ってからは大きくこじれることなく、スムーズに解決することができたんだ。とっても喜ばれて、こちらからしてもうれしかったな。

働き方を自由に選べる

―この仕事の厳しさは?

事件の相手方への対応が一番大変だと思っている人も多いかもしれないんだけど、実は依頼者との方針の調整の方が大変なんだ。

例えば、依頼者の意見が法律的に通らない場合は、法律的にダメだということをきちんと説明して、こちらの提案に納得してもらわなくてはならないんだ。

―裁判官も同じ司法試験を受けているが、裁判官にはない弁護士の魅力は?

弁護士は依頼者の意見に寄り添って事件を解決していくので、依頼者の方と信頼関係を築けるところが第1の魅力じゃないかな。

また、裁判官は基本的に各裁判所に配置され、そこで仕事をするんだけど、弁護士は自分で事務所を立ち上げてもいいし、大きな事務所で働いてもいい。中には企業内弁護士として活躍しているケースもある。働き方を自由に選べる点も、魅力の一つだね。

人の役に立ちたい人に向いてる

―この仕事に向いているのはどんな人?

「人の役に立ちたい人」かな。弁護士は人との関わりがあってこそ成り立つ仕事だと思っているよ。

―弁護士に憧れる高校生に伝えたいことは? やっておいた方がいいことはある?

弁護士の仕事は「総合力」だから、何にでも興味を持ち、一生懸命、今好きなことを突き詰めていけばいいんじゃないかな。

依頼者の方は、主婦、会社員、会社の社長、医者、音楽家、スポーツ選手など、多岐にわたる。例えば野球選手に依頼していただいた場合、弁護士が野球に詳しいと気持ちに寄り添いやすかったり、依頼者の方に心を許してもらいやすい。世の中にムダなものは何もないんだと思いながら、1日1日を大切に突き進んでください!

みたらしだんごさんとお父さん

【取材後記】弁護士は人を笑顔にできる仕事

普段、私たちは法律をあまり意識せずに生活しています。だから、法律に関わる仕事について自分から遠いというイメージを持ってしまっている人が多いような気がします。

しかし、いざ問題が起こったときに解決を導き出すのは法律です。そして、その法律を使いながら、人々に寄り添い、問題を解決していくのが弁護士です。そう考えると、以前より弁護士という仕事を身近に感じることができる気がします。

依頼人の方に感謝されたときのエピソードを話してた父の顔はとてもうれしそうで、また、誇らしそうでした。それだけ事件を解決できたときの喜びは、依頼者の方からしても弁護士側からも大きいのではないでしょうか。

人々が直面している問題を解決でき、人を笑顔にできる。弁護士は私が思っていた何倍もすてきな仕事でした。