大学入学共通テストが導入された2021年度入試では、私立大学でも入試改革が相次ぎ、志願者数にも影響を与えた。大学が受験生に求めることはどのように変わりつつあるのか。河合塾教育研究開発本部の近藤治さんに聞いた。(黒澤真紀)

早稲田・青山学院・明治・法政…入試の変更続々

――2021年度入試では、私立大学でも入試の変更が相次ぎました。入試改革は、「こういう受験生に入学してほしい」という大学からのメッセージともいえますね。

そうですね。それが顕著だったのが早稲田大学の政治経済学部です。数学が必須になったのは、「政経学部は大学に入ってからも必ず数学が必要です。その勉強をしっかりしてから入学してきてください」という大学からのメッセージ。そのインパクトが大きく、志願者は大幅に減りましたが、受けた生徒の学力層は全く変わりませんでした。

ここ数年、入試を通じて「高校までに学んだ○○が、大学のこういう部分で必要になります」というメッセージを出すようになった大学が多くなっています。22年度入試でも、法政大学、明治大学などが一部の学部で新たに英語の資格検定試験を利用するようになります。「大学に入った後は、読んで理解するだけではなく、英語で意見を伝えられる総合的な英語の力が必要です」ということなのでしょう。

逆に、青山学院大学では一部の学部や入試方式で、国語の負担を減らすようになります。これは、国語が必要ではないということではなく、「うちの学部では国語よりも英語や数学の力が必要です」というメッセージかも知れません。

2022年度入試は受験人口減少とコロナ禍の中で行われる(河合塾の資料から)

入試での採用増える英語民間試験とどう向き合えばよいか

――私立大学を中心に英語の民間資格検定試験を積極的に活用するようになっています。早いうちからの対応が必要でしょうか。

合格するためには、やっておいたほうがよいでしょう。ただ、私は、入試のために検定試験を受けるのは賛成ではありません。保護者の方にもよく聞かれるんです。「どの検定試験をとっておくと有利ですか?」って(笑)。「あくまで、英語が好き、得意だ、自分の力を測りたいという動機で受検し、その結果、志望大学でも使えたというのが本来の姿だと思います」とお答えしています。

共通テストで英語の総合的な力を測れるといいのですが、すぐには難しそうです。今は大学によって使える検定試験が異なり、スコアの基準も全く違うので、自分が受けた試験を使える大学もあれば使えない大学もあるということが受験生にとって、もどかしい状態です。

――異なる民間試験をどう比較するかという問題ですね。

英検とTOEIC、TOEFLを一つのものさしではかることなんてできません。英語の検定試験を使って合否を決めるというよりは、「高校時代に好きな英語の力を伸ばすためにこんな努力をしました」ということに対して加点する、という使い方がいいと思います。そういう受験生は、大学に入っても英語の力を伸ばすでしょうから。

――総合型選抜や学校推薦型選抜のウエートが増えると、これまで入試科目とは別のイメージがあった高校の総合学習や探究学習が入試にもつながりやすくなりますか。

そうですね。総合的な学習の時間などで学んだことそのものが入試に役立つかどうかは別として、そこで学んだ姿勢や、考え方、整理の仕方などは、これからの入試でかなり大事になるでしょう。

――従来の一般選抜向けの教科の学力と、教科を超えた探究型の学力をバランスよく身に付ける必要があるということでしょうか。

国公立大学を中心に一般選抜でも主体的な活動や協働性を評価する動きが増えています。難しいことですが、ある程度の教科学力にプラスαで高校の時にどういう活動をしたかも必要かと思います。「大会ではいい結果を残さなかったが、その過程で自分はこういう努力をした、仲間をこういうふうにまとめた、だから大学に入ったら、こういう活動をしたい」というように、自分がやってきたことが大学に入ってどう生かせるのかと伝えられるといいですね。そう考えると、高校時代の活動すべてが、入試に結びつきます。

高校の先生が、この大学はどういう生徒を求めているのかを一番知っています。調査書を書くのは学校の先生ですから、生徒のことを一番よくわかっているのも先生です。高校の先生に相談するのが一番いいと思います。

これからは、何点とるかよりも、自分がその大学で何を学びたいかという気持ちが大切です。共通テストで何点目標ですという以前に、何を学びたいかをしっかり考えたほうが、結果的には自分の進路に近づけるのではないでしょうか。

 
近藤治さん
こんどう・おさむ 学校法人河合塾教育研究開発本部主席研究員。河合塾入塾後、教育情報分析部門で大学入試動向分析や進学情報誌の編集に携わる。教育情報部部長、中部本部長などを経て、2021年4月から現職。マスメディアへの情報発信、生徒、保護者、高校教員対象の講演を多数実施。