私の父は一人で塾を経営しています。実際にどんな思いを胸に生徒たちを教えているのか、普段はなかなか聞けないので取材してみました。(高校生記者・梨子=2年)

生徒の人生に影響を与えられる

―この仕事をするようになったきっかけは?

元々、アルバイトで塾講師の経験があったんだ。サラリーマンをしていたときに声をかけてもらって、自分で経営をしていく機会を得たよ。

梨子さんとお父さん

―やりがいを感じる瞬間は?

実際に教えていく中で、生徒の意欲が出てきたと感じたときや、努力が実り志望校に合格できたときだね。自分の指導が、生徒の人生に影響を与えられていることが実感できる瞬間だよ。同じように、学校の先生なども、生徒の人生に関われることをやりがいとしている人も多いよね。

授業をしている時間はあっという間に過ぎてしまう。また、「テストの点数」という形で明確に生徒の成長が見られることも大きな魅力だよ。

生徒の状況を見極めることが大事

―同じ教える立場でも学校の先生とは違うの?

生徒のテストの点数を上げて、志望校の合格へ導くことに一番の軸足を置いた仕事になるので、成績アップのみに力を注いでいるという点では、学校の先生と違うアプローチの仕方になるところかなと思うな。

授業後のホワイトボード

―仕事で、自信を持っていることって何?

生徒一人一人が置かれている状況を的確に見極めること。その子のレベルや学習への態度をしっかりと見た上で、「こうしたほうがよいよ」と判断したことを率直に伝えアドバイスしているから、そこには自信があると言っていいと思う。

―大変だと思うことは?

生徒という相手あっての仕事。なので、「自分だけが頑張れば結果が出るわけではない」というところだな。例えば「定期テスト対策に使ってもらおう」とプリントを印刷しておいたのに、生徒が取りに来なかった……ということがあると、やはりつらいね。

塾自体を自分で経営しているので「こういった指導や対応は自分はできない、しない」と決めることはできる。折り合いの付け方は難しいね。

AIを使った学習が増えるのでは

―塾の先生はどんな人に向いていると思う? 

子どもが好きとか、勉強を教えることが好きとかも大事。だけど、これからの社会の将来を担う子どもたちを教えるにあたって、ある程度、先を見据えられる力がある、つまり「こういう未来を描きたいという構想がある人」でないとダメだと思う。

塾の本棚。赤本の下には、自習スペースに来た生徒のために『ドラえもん』なども置いている

 

―この仕事は、将来どのようになっていくと思う?

Alを使った学習が増えていくと思う。一方で、子どもたち一人一人のことを見極めて導いていける力のある人は、活躍できる場だと思うよ。

―最後に塾の先生の仕事に懸ける想いを教えて。

日々、「感動」があることが大事。

教育者として、子どもと関わることができるからこその「感動」がある。何度も言うようだけど、これがこの仕事の一番の醍醐味だよ。

【取材後記】自営業の大変さがわかった

父1人で塾をやっていく大変さを話してくれました。ある程度自由だし、やりたくないことをさせられることもありません。でも自分自身で仕事の調節をしなければならないことも多いため、塾だけでなく、自営業はその人の性格や状況によって、向き不向きが分かれるのだということがわかりました。