私の父は大手自動車メーカーの下請け会社で働いています。部署は「品質本部・検査部」。あまり目立たないものの、なくては困る部署。その仕事内容についてインタビューしてきました。(高校生記者・めておーら=2年)
自動車が安全に作られているか品質チェック
―どんな会社で働いているの?
大まかに言うと私が働いている会社は「部品製造メーカー」というくくりに分類されるんだ。メーカーの下請け企業は全部で百社以上あって、それぞれが決まった部品を作っているよ。私たちは自動車の下側、タイヤやエンジンを支える部品を作っているんだ。
―具体的にどんな仕事をしているの?
私は「品質本部・検査部」に所属しているんだ。今年で36年目になるよ。
ここでは主に作られた部品のよしあしを確認しているよ。製品は主に機械で作っているので、設計図通りに組み立てられているのか、生産した部品の中からランダムに選び確認していくんだ。標本調査というよ。
部品のよしあしを判断するので、責任があって、やりがいを感じることができるよ。
―1日の流れを教えて。
朝、始めに朝礼があって、そのあといろいろな部署から来たメールを確認し、資料・データ作り、必要に応じて会議を開いたりするんだ。
機械などのトラブルがあったら駆けつけ、解決策を探すなど対処するよ。近年は管理職になって事務作業がメインなんだけどね。
向上心を持たす部下の指導に苦戦
―その道を目指すのに資格とかいるの?
もちろん入社試験はあるけれど、当時は一般常識を問う問題だったからそんなに準備はしなかったよ。会社に入ってから機械操作を学んだんだ。
昇任試験が数年に一度あって、本を読んで感想文を書き、その本の内容を自分の仕事に置き換えたらどうなるかとかも問われるよ。
―この仕事の厳しいところは。
うーん…。一番のダメージは、自分の考えた仮説と、実際の結果が大きくずれていたことかなぁ。
あとこれはどこの会社でも言えると思うけれど、時代によってコミュニケーションの仕方などが変化したことだね。
昔は上司の言うことを一生懸命に聞く、案を出したらとりあえずやって失敗して学ぶ、という考え方だったのが、今では指導されるほうに気を遣って指導しないといけない。部下が案を出したら「どんな影響を及ぼすか」とまずは考えさせなきゃいけない。
どうしても慎重な姿勢になってしまうんだ。そうなると向上心がなくなってうまく育たないよね。
どこでもドアのような車を作りたい
―自動車産業の将来のビジョンは。
地球温暖化防止のために、二酸化炭素を出さないエコな車(主なエネルギーは電気)を作ることが優先的に行われるよ。そのためには車を軽くしなければいけないんだ。
私の夢は、ドラえもんの「どこでもドア」のように、どこでも自由に行けるような車を作ることかな。
―海外出張の内容を教えて。
メーカーの海外展開のため、現地の人に車の部品の作り方を教えに派遣される。私も海外に行ったよ。
とある国の話をしようか。その国では地元産の車は作っていたけど、日本の車は作っていなかったんだ。現地の人に聞いてみたらやはり作り方が全く違うようで、日本の方が丁寧なんだって。
―海外生活について教えて。
私が行ったところは衛生面がよくなく、道路にゴミがあるなど大変だったよ。おかげで日本がどれだけ衛生面がよく安心かを実感することができたね。
ホテル住まいで約1年半滞在したかな。あたりは草原地帯で動物が普通に歩いて、面白かったよ。現地では肉を食べたりお酒を飲んだりあまりできなかったけれど、日本人向けのホテルに宿泊していたことで、食べることには問題はなかったな。日本食も食べられたし。
―海外出張を通して後悔したことは。
やはり英語が重要だと言うこと、仕事に対する意識が日本と海外で違うこと、現地の情報を知って臨機応変に対応できるように柔軟な思考を鍛えておくことが大事だと思ったよ。
これから海外進出する人に言うけどね、向こうの人は話好きで楽観的な人が多いので結構面白いよ。積極的に話をして。ジェスチャーでもいいよ。自分の視野を広げていってほしいな!
【取材後記】知らなかった父の姿
これまで知らなかった父の姿を知ることができました。父の仕事は、営業部や製造部とは違い、「安全な部品を作ることが当たり前」なので表彰はされません。ですが、父のような仕事をしている人たちがいるからこそ、私たちは安全に自動車に乗れるのだということを再認識しました。