「障がい者と関わる仕事」と言われたら、皆さんはどのような職業を想像しますか? 母は、私が産まれる前から「障がい福祉サービス事業所」で働いています。高校生にとって身近ではない、この仕事の実態を母に取材しました。(高校生記者・カモミール=2年)
障がい者をサポートする母の仕事
―仕事内容を教えて!
知的障がい者、精神障がい者、身体障がい者の方々が通所する事業所で働いているよ。利用者さんの作業、生活の支援が主な仕事内容かな。ほかにも、一緒に体を動かすこともあるよ。
―作業、生活の支援、運動って何をしているの?
おしぼり用のタオルを決まった枚数にまとめて、ひもで十字に縛る。紙袋の中敷きのセットをする。運動はバランスボールを使ったり、散歩をしたりするよ。
―1日の流れは?
9時30分の朝礼と歌を歌う時間が終わり次第、適宜班に分かれて個別の課題に取り組むよ。1時間くらい昼食と昼休みの時間を挟んで、午前中の続きをするんだ。
15時過ぎには終礼をして、そのあと掃除と利用者さんの活動記録を書けば、仕事は終わりだよ。
―課題は皆それぞれ違うの?
そうだよ。利用者さんたちにも、もちろん得意、不得意があるからね。全員が全員、同じ作業をするわけにはいかない。
―活動記録って?
その日、利用者さんが何をして、そのときにどういった様子だったかを記録しているよ。
―この仕事を目指したきっかけと、その時期はいつ?
入所施設に泊まり込みでボランティアをしたことかな。その時私は、21歳だった。
―もともとは何をしていたの?
短期大学を出てから、一般企業で働いていたよ。
人の心に寄り添う仕事
―この仕事で一番求められることは?
利用者さんの特性を見極める力かな。あと、人の気持ちを察する能力、考えようとする心も大切だよ。
―どうやったらそれらの技術を身に付けられる?
それに関しては、とにかく経験を積むしかないと思う。そして、先輩方の仕事ぶりから学ぶことだね。
―この仕事をしていて、やりがいを感じる瞬間は?
やっぱり、利用者さんと気持ちが通じ合ったときかな。以前担当した人に、自閉症の方がいたの。その人はコミュニケーションをとることが苦手で、意思の疎通を図るのが大変だった。その人の考えていることがくみ取れたときは、本当にうれしかったよ。
―逆に、大変なことは?
こだわりの強い利用者さんと一緒に仕事をしているとき。こちらの考えを一方的に押し付けるわけにはいかないから、そこは大変かも。
失敗してもポジティブ精神で
―この仕事に向いているのはどんな人?
対人援助の仕事はマニュアルがなくていろいろと気苦労も多いので、気持ちの切り替えがうまい人。嫌なことがあっても、失敗をしても、反省をして、「次は頑張る!」と思えるポジティブな精神も大切だよ。
―この仕事を目指している高校生に一言メッセージを!
この仕事を目指している人には、まず障がい者の方と関わってみてほしい。世の中には障がい者に対する偏見や差別を抱いている人もいる。高校生の皆さんには、そういった考えを持ってほしくない。まず、障がい者について知ることからはじめてみよう。
【取材後記】道は違えど、母の背中を追いたい
以前から興味があった母の仕事。今回の取材を通して、母の仕事への熱意を感じることができました。それと同時に、チャレンジ精神を持つことの大切さを教わったと思います。私が大人になったとき、やりたいことを見つけて職を変える勇気があるか。今の私には、その大胆さはありません。
私が進みたいと思っている進路は母と似ていますが、また違う道です。高校生のうちにさまざまな挑戦をしていきたいです。